IE9ピン留め

ゴールデン街にて朗読夜会【2月3日(金)】  

2012年 01月 16日
来たる2月3日(金)、新宿ゴールデン街「新子」にて、朗読会を行います。

岡部えつ 怪談朗読夜会
2012年2月3日(金)
出演: 岡部えつ(作・朗読) 東保光(電気大正琴)
ライブチャージ¥投げ銭
cover charge ¥1000+1ドリンク¥500〜
新宿ゴールデン街/新子

※入れ替え制ではありませんので、お好きな時間にお好きなだけ聞いていってください。

【追記】
お店は10席ほどしかありません。近所を通ったらふらりと寄ってみるか、の場合はいいのですが、確実に見たい聞きたいという方は、ご予約をしていただいた方がよろしいです。
★お店へのご予約・お問い合わせは、下記まで。



ゴールデン街に行ったことがないという方も、女性一人でも、このお店はリフォームされてとってもきれいで、良心的ないいお店なので、この機会にぜひとも!

# by etsu_okabe | 2012-01-16 00:55 | 小説関連の活動など

明けまして2012年。あえてここで2011年を総括!  

2012年 01月 03日
 あけましておめでとうございます。
 2012年が、いつものようにそろりそろりとスタートしました。さて、どんな一年になることやら。
 いまさらではありますが、来年の展望を占う意味もこめて、昨年を振り返ってみたいと思います。単純に、年末に総括を忘れてしまったわけですが。

【総括・私の2011年】
1. 新刊『新宿遊女奇譚』が出た。
 思えば昨年の年始は、大晦日に実家へ帰って恒例の「神亀活性にごり」で年越しはしたものの、元旦早々には仕事場へ帰り、頭を抱えて執筆をしておりました。
 その甲斐あって、4月に新刊「新宿遊女奇譚」をメディアファクトリーより上梓、わたしの2冊目となる単行本が、世に出ることとなりました。関係者の皆様、解説を快く引き受けてくださった盛田隆二さん、心より感謝申し上げます。

2. 朗読ライブを始めた。
 その新刊発売記念として「何かやりましょう」と声をかけてくれたのが、おなじみ荻窪ベルベットサン。折しも吉田隆一氏率いるDystopia Sessionライブが控えており、そこで「何か」と言われたところで、わたしのできることは自作小説の朗読しかない。ということで、フリージャズの猛者たちとの、朗読ライブが実現しました。
 記念すべきこの第一回目の朗読が、こちらに。→特命店長
 それがきっかけとなり、ベルベットサン&ヴィヴィアン佐藤さん共同企画のイベントにも朗読で出演させていただくことに。このときは、わたしにいっとう最初に小説朗読をさせた男、フリージャズピアニストのスガダイロー氏の発案で、朗読家&シンガーのアナベルさん、スガダイロートリオでもおなじみのコントラバス奏者東保光さんとのコラボという、大変エキサイティングな組み合わせでの朗読となりました。
 これが大変うまくいき、夏にはヴィヴィアン佐藤さん主催のイベント「怪談ナイト」に再び出演。お客様からも好評を得、大満足な朗読ができました。
 そして再び声をかけていただいた、Dystopia Session! 全てはここから始まったので思い入れは強かったのですが、年内にもう一度できるとは、なんという幸せ。→ライブの模様はこちら
 同じ週にはベルサンイベントで吉田隆一氏に朗読劇を読んでもらい、同じくその週に、あの秘宝感で、わたしの脚本による音楽劇が演じられることに!
 「朗読」に端を発して、めまぐるしくいろんなことが起きました。関わってくださった方たち、全員に大大大感謝です。

3.旅した。
 昨年は、北海道(札幌、旭川)、香港、十津川温泉〜熊野古道、与那国、佐渡島、そして再び香港、という、前年の韓国&与那国だけのリベンジとしては、上々の旅ライフでした。どれもこれも思い出深いものばかり。
 今年はまだなんの予定も立てていませんが、ロンドンの友人を訪ねて、そのついでにバルセロナに行く、という夢を持ってます。なんならそこからパリに寄り道も。完全に、わたしの頭の中ではヨーロッパが北関東くらいの大きさになっています。

4.出会った。
 昨年も、それはそれは素敵な出会いがありました。たくさんではありません。でも、胸が躍るような出会いです。今年はそんな方たちと、さらに関係を深められたらいいな。


 というわけで、色々あった2011年。楽しいことばかりでなく、悲しいことも、悔しいことも、しんどいこともありました。でも、それがあったからこその2012年。今年も全力で走ります。
 どうぞ、よろしくお願いいたします。

 岡部えつ

# by etsu_okabe | 2012-01-03 05:22 | 日々のこと

「翼をください」12月19日の朗読ライブ動画  

2011年 12月 23日
 2011年12月19日(月)@荻窪ベルベットサン『Dystopia Session』ライブの動画がアップされていたので、ご紹介します。

 Dystopia Sessionとは2度目の顔合わせ。前回で要領はわかったので、今回は原稿に初めからわたしなりの音楽に対する指示を書き込んで、リハーサルに臨みました。
 この小説(短編集『枯骨の恋』収録の「翼をください」)には、みんながよく知っている歌、作品のタイトルにもなっている「翼をください」が出てきます。フリー&即興の猛者たちに、これを演ってくれというのは勇気がいりましたが、反対に、そう要求したらどんなのが飛び出てくるだろうかという、期待もありました。
 果たして。
 わたしの想像を何十倍も越えた、すんごい「翼をください」が生まれました。読みながら、ぞくぞくしっぱなし。こんな興奮て、他では味わえない。
 というわけで、小説とはまったく別の、新しい「翼をください」という作品ができあがりました。
 生モノです。

 前半がDystopia Session、後半が彼らとわたくし岡部えつの朗読です。

>>見られない方はこちらから
Video streaming by Ustream

◆こちらもぜひに
12月24日(土)
@新宿ピットイン|聖・秘宝祭/秘宝感 に、脚本で参加。
>>詳細はこちら

# by etsu_okabe | 2011-12-23 00:35 | 小説関連の活動など

12月24日★脚本で『秘宝感』に参加します!  

2011年 12月 11日
 来たるクリスマスイブ、12月24日(土)、新宿ピットイン昼の部の奇跡と呼ばれているあの『秘宝感』に、わたくし脚本で参加いたします。

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2011.12.24(Sat)14:30-「聖・秘宝祭」@新宿ピットイン(昼)
ゲスト:Nobie(vo)、菊池美佐子(dance)、よしだ☆まぎか(魔法中年)、岡部えつ(脚本)
2,500円(1D付)

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 大好きなこのバンドに、脚本で参加できるなんて、なんという素敵なクリスマスプレゼント!
 ということで、渾身振り絞って書きました。パーティや家族サービスや恋人とのデートなど、スペシャルなイベントが控えている夜の前に、イブの午後のひとときを、秘宝感で心も頭も体も暖めてはいかがですか?


★そして、その前のこれも、どうぞよろしくです。
12/19 Mon |荻窪ベルベットサン|Dystopia Session|OPEN19:30 START20:00|CHARGE¥2500(w/1drink)【出演】吉田隆一(bs) 瀬尾高志(b) 池澤龍作(dr) スガダイロー(pf)【ゲスト】岡部えつ(怪談朗読)


◆岡部えつ 2011年12月の活動
12月19日(月)
@荻窪ベルベットサン|Dystopia Session ライブに、自作小説朗読でゲスト参加。
>>詳細はこちら
12月21日(水)
@荻窪ベルベットサン|大人遊戯イベント(仮)に、朗読劇作品提供で参加。
>>詳細はこちら
12月24日(土)
@新宿ピットイン|聖・秘宝祭/秘宝感 に、脚本で参加。
>>詳細はこちら


# by etsu_okabe | 2011-12-11 01:50 | 小説関連の活動など

物語のルミナリエ: 異形コレクション (光文社文庫)に『嫁入り人形』を。  

2011年 12月 01日
 12月8日に発売されます『物語のルミナリエ: 異形コレクション (光文社文庫)』に、『嫁入り人形』という掌編を書かせていただいています。

 今回の異形コレクションは、78のショートショート集。
 テーマは「掌編小説である」ということ以外にとくに設定されていませんでしたが、依頼時の企画書に書かれていた『震災後、大きな無力感にさいなまれている読者に、いや、そもそも作家じしんが自分自身の悦びを取り戻すために、物語の原点である「ショートショート 短い短い物語 掌編小説」を集めていこうというのが、今回の趣旨』との、監修の井上雅彦さんのお言葉を胸に抱きながら、怪談を意識しつつもそれにとらわれず、再生、希望、脱却、といった前向きの思考で書きました。

 届いた見本を手に取って、文庫本でありながらこのずしっとくる重みは、物理的な重量だけでなく、78の作家の「思い」の重さなのだなと、感じています。

 なんとも贅沢な、「異形」らしい希望に満ちた一冊。ぜひお手に取ってみてください。
『物語のルミナリエ: 異形コレクション (光文社文庫)』


◆岡部えつ 2011年12月の活動
12月19日(月)
@荻窪ベルベットサン|Dystopia Session ライブに、自作小説朗読でゲスト参加。
>>詳細はこちら
12月21日(水)
@荻窪ベルベットサン|大人遊戯イベント(仮)に、朗読劇作品提供で参加。
>>詳細はこちら
12月24日(土)
@新宿ピットイン|聖・秘宝祭/秘宝感 に、脚本で参加。
>>詳細はこちら


# by etsu_okabe | 2011-12-01 10:24 | 小説作品

12月19日、朗読しますよ、のお知らせ。  

2011年 11月 24日
 2011年12月19日(月)、荻窪ベルベットサンにて、小説の朗読をいたします。

 この日のメインアクトである『Dystopia Session』は、今年6月、わたしに初めて朗読のお仕事をやらせてくれたユニット。あの緊張と興奮は、今でも忘れられません。またこうして呼んでいただいたこと、本当に嬉しい!

 フリージャズの表現と小説表現というのは、まったく真逆のやり方から生まれるので、実はとっても怖い。演奏家たちがその場で作り上げていく、まさにとれとれぴっちぴちの活魚的な音楽に、わたしが絡めようとしている小説というものは、長い時間漬け込んでさらに何度も手を突っ込んでかき回した、ぬか漬けのようなものなのだ。
 しかし、両極端である南極と北極がオーロラを同時に輝かせるがごとく、フリージャズと小説にも共鳴するナニかがきっとあるはず。
 さて、この日はどんなオーロラが輝くか。楽しみだな〜。

 師走の月曜日でお忙しいでしょうが、よろしかったらいらしてください。お待ちしています。

荻窪ベルベットサン
12/19 Mon |Dystopia Session|OPEN19:30 START20:00|CHARGE¥2500(w/1drink)
【出演】吉田隆一(bs) 瀬尾高志(b) 池澤龍作(dr) スガダイロー(pf)【ゲスト】岡部えつ(怪談朗読)

◆岡部えつ 2011年12月の活動
12月19日(月)
@荻窪ベルベットサン|Dystopia Session ライブに、自作小説朗読でゲスト参加。
>>詳細はこちら
12月21日(水)
@荻窪ベルベットサン|大人遊戯イベント(仮)に、朗読劇作品提供で参加。
>>詳細はこちら
12月24日(土)
@新宿ピットイン|聖・秘宝祭/秘宝感 に、脚本で参加。
>>詳細はこちら


# by etsu_okabe | 2011-11-24 23:35 | 小説関連の活動など

お腹よじれて秋の燗酒|女の一人酒場[2]  

2011年 11月 03日
 一人酒場とタイトルをつけておきながら、2回目にして「二人」。
 先日、近所に住む友人(女)と、地元でひっかけた。
 酒を酌み交わせる親しい友達が近所にいるというのはいいもので、思い立ったときに「今から一杯どう?」のメール一本で、すっぴんもいとわず、場所も時間も「じゃ、テキトーに」で酒場に向かえるのがありがたい。
 これも、ふだん"一人酒場"をしているからこその「ゆるり感」である。誘って断られても、そのまま一人飲みに切り替えできるところが、一人酒場派の強みだ。

 道端で待ち合わせ、そこから近いという理由で、互いに何度か行ったことのある、日本酒専門の居酒屋へ行くことにした。
 夕暮れから肌寒くなったこの日、昼から出ずっぱりで薄着だったわたしは、一杯目から燗酒に。すすめられたのは『純米 農産酒蔵』という岡山の酒のぬる燗で、口に残る香りがとても気に入って、次に別のを飲んだあと、〆に再び頼んだ。
 肴は、転職して間もない友人の、新しい職場での驚きのエピソード。福祉関係の仕事なので、中身はヘビーなことばかりなのだが、事実よりも面白く語る天才である彼女は、これでもかとわたしの腹をよじらせる。決して馬鹿にしたり見下したりしているのではなく、しんどいことを笑い飛ばしてしまうのだ。
 人は、辛いことも苦しいことも、笑うことで乗り越える技を持っている。むすっと眉間に皺を寄せて横を向いてしまうか、しっかりと前を見て笑いながらそれに立ち向かうか、どっちがいいも悪いもないが、後者のほうが前へ進める可能性を秘めていると思う。そうであるならば、わたしは笑うほうを選ぶ。

 この日は結局、燗酒3合。体も心もほっかほかに暖まって、徒歩帰宅。いいな、近所。

# by etsu_okabe | 2011-11-03 13:47 | 女の一人酒場

女の一人酒場  

2011年 10月 29日
 声を大にして堂々と好きだと言えるものはそうないが、これだけははっきりと、
「酒場が好きだ」
 重たかったり干涸びていたり熱かったり冷たかったり、様々なモノを背負った人たちが、荷物を降ろしにやって来る。そこにはそれを丸ごと受け取って、しゃっしゃとさばいてくれる店主がいる。しかし両者の間には磨き上げられたカウンターがあり、決してなあなあな馴れ合いは許さない。お尻も背中も温かいが、あくまでも薄情。こんな居心地のよい場所、他にあろうか。
 わたしも客として、荷を降ろしにドアを開ける。行くときは一人、多くても二人だ。示し合わせて大勢でわいわいと行くのは、たとえそこが居酒屋であってもバーであっても、役目はレストランだとわたしは思っている。酒場とは、盛り上がる場所ではなく、しんみりとものを思う場所なのだ。
 今夜も荷物を抱えた一人ぼっちが、あっちのネオン、こっちのネオンと寄り集まり、アルコールとニコチンと小さく流れる音楽を胸に染み込ませ、慰められているのだろう。
 ああ、いいなあ。

# by etsu_okabe | 2011-10-29 17:29 | 女の一人酒場

エフゲニー・キーシン ピアノリサイタルで見た、人間の同調行動。  

2011年 10月 24日
 信号待ちをしているとき、たった一人のせっかちな人が起こしたフライング行動につられて、周りの人たちまでもが次々に赤信号の道を横断していくのを、何度も目にしたことがある。わたし自身ががつられたこともあるので、あの心理はよくわかる。わかった上で、あれは気持ち悪いなとも思う。

 昨日、待ちに待ったエフゲニー・キーシンのピアノリサイタルに行ってきた。
 プログラム終了のあと、興奮した観客からは、アンコールを求める拍手が鳴り止まず、キーシン君もそれに応えてくれていた。確かに長かった。結果を先に言えば、アンコール曲は4曲、挨拶だけに現れた数はもう覚えていないほどだ。
 その、長い長いカーテンコールの途中のこと。
 素晴らしい演奏にもう少し触れていたい、あともう一曲お願い! 弾かなくてもいいから顔見せて! という観客の気持ちを載せた拍手がなかなか収まらない中、「もういい」と思ったのか、終電の時間なのか、はたまたただのトイレか、理由はわからぬが前方の客が一組立った。
 すると、それを目にした後方の客が何人か、立ち上がったのだ。それにつられて、また何人かが立つ。それにつられてまた何人か。それにつられてまた、また、また。
 あとから立った人たちのほとんどが、本来なら席にいてよい人たちであることは、すぐにわかった。
 周りなど目に入らぬ熱烈なファンや、キーシンの公演をよく知っていて「まだある」と分かっている人たちは、動かず手を打ち続けている。やがて、それに応えてキーシン君がステージに現れる。拍手がいっそう大きくなる。すると、帰りかけていた人たちのほとんどが立ち止まり、ステージを振り向き、アンコール演奏が始まれば、その場で立ったまま最後まで聴くのだ。つまり「演奏もういい」でもなければ「終電間に合わん」でも「トイレやばい」でもないのである。
 中には「もう飽きたから帰ろう。でもまだ弾くなら聴いていこう」という人もいるだろう。しかし二階席から眺めていると、それはどう見ても、あの、信号待ちのフライング横断と同じ動きだった。
 同調行動。
 東電福島原発爆発事故のあと、何度も考えさせられた、人間の不可解で不気味な心理行動である。 Wiki「同調現象」

 14歳でデビューして以来、世界中を公演し続けているキーシン君は、このような人の行動について、何を思うのだろうか。
 同調行動にあおられた人々がぞろぞろとステージに背を向けて歩き出し、それがもう「大勢」と言ってもよいくらいの割合(ロックコンサートであればとっくに客電がついているであろう)になっても、拍手し続ける客がいる間は何度でもステージに現れ、深々と頭を下げる崇高な芸術家の姿に、わたしの胸を激しく打ってきたものは、"感動"だけではなかった。



<余談>
 わたしはコンサートでも映画でも、よほどのことがない限り、客電が完全について公演終了のアナウンスがあるまでは、席を立たない。最後の一滴までが「作品」だと、まだ子供の頃に誰かに諭されて以来のことだ。おかげで、終演後の余韻に浸る楽しみを覚えた。
 
【演奏曲リスト】
<オール・リスト・プログラム>
超絶技巧練習曲 第9曲 回想
ピアノ・ソナタ ロ短調
詩的で宗教的な調べより「葬送」
巡礼の年第1年より「オーベルマンの谷」
巡礼の年第2年補遺「ヴェネツィアとナポリ」より “ゴンドラを漕ぐ女” “カンツォーネ” “タランテラ”
<アンコール>
リスト 愛の夢第三番
シューベルト/リスト ウィーンの夜会第六番
ショパン/幻想即興曲
ブラームス/子守唄

# by etsu_okabe | 2011-10-24 10:40 | 音・詩のこと

佐渡島の夏休み  

2011年 10月 16日
 佐渡島の西北、外海府にある国民宿舎『海府荘(かいふそう)』で、晩夏の8日間を過ごした。
 目的は、集中して書くこと、である。
 滞在先として佐渡島を選んだのには、わけがある。ここに移住して20年近い友人が、この宿を<仕事場>として熱烈に勧めてくれたのだ。
>>ブログにも

 到着してみれば、目の前には勇壮な関岬がせり出す関港。『海府荘』は、そこから船を出して釣りを楽しむ人たちを長年主な顧客としてきたようだが、二代目ご主人が営む現『海府荘』には、知れば知るほど「それだけじゃもったいない!」と外野が口出ししたくなる要素が詰まっていた。さてそれはなにか。

 宿の三要素といえば、環境ともてなしと費用、であろう。

 まずは環境について。
 わたしが泊まった本館の客室は、全てオーシャンビューである。一階だが高台にあるので、障害物は一切なく、関岬、関港、そこから広がる日本海を一望に見渡せる。わたしの目的を知ってくださっていたご主人は、中でも最も静かな一番奥の部屋を用意してくれていた。
 わたしは毎日、日が出る頃にはその窓辺に置かれた椅子に腰掛け、書き物を始めた。集中が切れれば海を眺め、眠気がくればころんと横になり、そして日暮れには、岬に沈むゆく夕日に見とれる。
 風呂とトイレは共同である。その風呂もまた、客室と同じオーシャンビューなので、わたしは時折頃合いを見計らって入浴し、湯船から日の入りを眺めるという贅沢な時間を過ごした。ちなみに風呂は24時間いつでも入れる、ジャグジー付きである。
 書き物ばかりしていては、運動不足になる。そこで目の前の海岸に散歩に出るわけだが、季節外れということもあり、そこには朝も夕方も人っ子一人いない。岬に広がる森を縄張りにする番いらしき鳶が二羽、気持ち良さそうに飛んでいるばかりである。360度くるりと回っても日本海を独り占め、これを寂しいととる人もいようが、わたしには最高にリッチなコースだった。

 そして、もてなし。
 この宿の何より一番の特徴は、ご主人がかつて、名を聞けば誰もが知る都内三ツ星フレンチレストランのキュイジニエ(料理人のこと。フランス語ってカッコいい♪)であった、ということであろう。
 その主が、地元で仕入れた、あるいは自らその日海に潜って穫ってきた、これ以上にないぴっちぴちの新鮮な食材を使って、腕を振るってくれるのである。美味しくないわけがない。
 わたしには、宿の案内に掲載されているような豪勢な磯料理を、8日間毎晩平らげる体力はないので、最初から「朝食つき、夕食抜き」で予約をとっていた。その際「夕食は、地酒を2合ほどに肴が2、3品程度あればいいのですが……」と問い合わせたところ、快く「ご用意します」とおっしゃってくださった。

「長期滞在のお客様には、なるべく要望を出してもらって、それを叶えて差し上げたい」

 というのが、海府荘の方針だそうだ。ここ、ここが肝心。この部分でわたしは今回、本当に気持ちのいい時間を過ごすことができた。
 さあそして夕食、蓋を開けてみればこの豪勢な「肴」の数々である(まだまだあるけど載せきれません!)。
 グルメではないのでその解説はいちいち書かないが、分かる人には分かるであろう。佐渡の旨い地酒(今回は真稜)が、進むったらありゃしないのである。昼間使い倒してよれよれの神経が、ふあ~っと息を吹き返して膨らんでいく、そんなまさに”慈しみ”の料理の数々であった。
 料理を運んでくれるのは、ご主人の奥様である若女将(美女!)と、息子さんたちである。彼らは時に、一人で食べているわたしの話し相手になってくれた。魚にまったく疎いわたしに、図鑑を持ってきて説明してくれた日もあった。
 ご主人が元フレンチのコックさんならばと、ある晩ワインを頼んでみれば、これがもう「ここ本当に佐渡島? マルタ島とかじゃないの?」と、行ったこともないマルタ島に贋デジャブをしてしまうほどの、魚介に合ったさっぱり系の赤ワインに、工夫に工夫をこらした絶品西洋料理が並ぶのである。
 そして、パン。パン! わたしの愛するパン(パン屋の娘ですので)!
 なんとこの宿では、自家製のパンを焼いているのである。これも長期滞在の場合、所望すれば、朝食に焼きたてのパンが食べられる。それも数種類の、食事パンから菓子パンまで。もうもう幸せ!

 最後に、費用である。
 これは、宿のホームページを見ていただくのがよいだろう。→http://kaifusou.com/
 わたしの場合は、本館夕食抜きなので、基本一泊5,500円(あれだけのサービスを受けてもさすが国民宿舎、安い!)。プラス、長期滞在ゆえに、特別に作ってもらった夕食である。これがもう、考えられないような安価であった。季節や食材、酒の種類によっても変わってくるであろうから、ここには書かないが、佐渡だからこその、いや海府荘だからこその、思わずきゃーっと叫んでしまったお値段である。

 わたしはこの宿で、毎朝4~5時には自然に目覚め、1~2時間ほど書き物をしてから朝食、気が向けば散歩、そしてまた執筆、昼食は持参したナッツ類を軽く摂る程度で書き続け、夕方には風呂、気が向けば散歩をして、19時には晩酌を始める。そして、21~22時にはもう布団に入ってしまう、という8日間を過ごした。
 なんという充実。
 しかもその間、体に摂り込むのは、新鮮で美味しくて優しい、佐渡の料理と地酒なのである。時にはワインもね。
 その日に使い果たしたものはその晩のうちに補給して、翌日にはまたパワー全開で創作に打ち込む。そんな当たり前なのに普段はできない生活を、たっぷりとここで過ごすことができた。

 追記すべきこととしては、まず、無線LAN接続が可能ということ。ただし、部屋によっては電波が届かないので、ロビーの方まで行かねばならない。わたしのように、日に2度ほどメールチェックをする程度であれば、なんの不便もなかった。
 それからテレビ。通常部屋にテレビはないが、長期滞在客には、希望があれば設置してくれるそうだ。しかしわたしのような目的であれば、不要であろう。
 そしてもうひとつ。散歩していた関港の海岸には、バブルの頃に整備したという、きれいなテラスができているのだが、いるのはフナムシだけなのである。ここに日暮れどき、テーブルと海府荘のご主人に拵えてもらった料理を運び込み、夕日を眺めながらきんと冷えた白ワインなんぞをやったら、最っ高ではないか!! と。これはわたしの夢想である。しかしできないことではない気がする。いつかきっとやろう。さすがにこのときばかりは、一人ではなく。食いしん坊の友人たちとわいわいでもいいだろうし、素敵な男性と二人ってのもいいな。夢想、夢想、ああ夢想……。

 あきれたことに、わたしは宿にジャケットを忘れて帰ってきてしまった。ご丁寧に、宅急便で送ってくださったその荷の中に、心に染みるメッセージカード。
 海府荘、どこまでも素敵な宿である。
 あまりに素敵で感動したので、回し者的に、宿の紹介記事を書いてしまった。

# by etsu_okabe | 2011-10-16 20:03 | 旅のこと