小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

ハッピーな夜

 リトルキヨシトミニマム!gnk! のライブを見に、新宿歌舞伎町へ。大好きな街なので、最初から心は弾み気味だ。

 ちょっと早めに着いたので、ライブハウスの隣にある小さなバーに入った。若い男の子が3人、カウンターとホールとキッチンに別れててきぱきと働いている。カウンターに案内され差し出されたメニューを開くと、雰囲気に似合わずシングル・モルトの品揃えもまあまあ。何も期待せずに入った店がこうだと、本当に嬉しくなってしまう。
 ボウモアのストレートをちびちびやりながら友人と他愛のないお喋りをしている間、ついつい目の前のバーテンダーに目がいく。この若者、とにかくじっとしていないのだ。客のオーダーを取りながら、カクテルを作ったかと思えばロック用のデカい氷を器用に砕き、キッチンから料理が出れば、素早くトレーにセットして運ぶ。見ていてなんとも気持ちがいい。
 小一時間もしてグラスが空くと、絶妙なタイミングで「何か飲み物をお持ちしますか?」ときた。しかし残念ながら、もう時間だ。チェックを頼むと、
「これからライブに行かれるんですか?」
 と言う。
「えっ。どうして分かるの?」
「先程から、音系の話をされてらしたでしょう。お隣のライブハウスですか?」
 あれだけ忙しく働きながら、客の会話にもちゃんと注意を向けていたのだ。感心しつつ、気にかけてもらっていたことに心がぽあんと幸せになる。

 いい接客というのは、本当に人をハッピーにする。わたしは「味」よりも「人」が気に入ってリピーターになることの方が多い。

 昔、一人暮らしを始めたばかりで生活の厳しかった友人が、会社勤めのあとバーでアルバイトをしていたとき、ボロボロにくたびれてどうにもならなくなると、深夜の「すかいらーく」に駆け込んでいた。そこで働くウエイトレスのKさん(名前も覚えている)の接客が、「とにかく天使のようなの!」と言って。
 Kさんは角張った顔の美人でもなんでもないおばさん(失礼!)なのだが、その笑顔と手抜かりのない気配りが、友人の疲れた心を癒しに癒してくれたそうだ。
「彼女がいなかったら、わたしはあんなしんどい生活をこれほど続けることはできなかったと思う」
 と、友人はよく言っていた。ファミレスの店員と客だから、会話をするわけでもない。ただの接客だけで、人はこれほど他人を幸せにできるのだ。

 ライブを見たあと、いつものようにゴールデン街に流れた。
 久し振りに行ったので、マスターが「オカベさん、いつもお綺麗ですね」と言ってくれた。この人、時々思い出したようにこの台詞を言ってくれるのだ。サービス・トークだろうが何だろうが、わたしはこれでちょびっといい気分になれる。

 気持ちのいい音楽を浴びて、気持ちのいい接客にあって、なんともハッピーな週末の一夜。
 こういうことがあるから、明日も生きてみようという気になれる。
[PR]
by etsu_okabe | 2004-10-30 23:03 | 日々のこと/エッセー