小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

女の、二種類の涙。

 女が男のために流す涙には、二種類ある。「見せつける涙」と「隠れて泣く涙」だ。
 見せつける涙のほうは、どうとでもすればいい。それが好きな女なら可愛いと愛おしがって抱きしめればいいし、嫌いな女なら「うぜえな」と突き放せばいい。どうせ手段の涙なのだ。
 しかし、隠れて泣く涙はこれとはまったく違う。
 女が隠れて好いた男のために泣くとき流すのは、それは本当に身を切るような切なさと苦しさで、誰にも慰めきれない、たとえ好きな男でも慰めきれない、いや、元凶であるその愛しい男にこそ慰めることができない、悲しく痛い涙なのだ。
 寂寞の中、諦めるか忘れるかできるまで、心身を捩じ切るように泣いて泣いて泣いたあと、女は人知れずその涙を拭い、再生する。男が猛烈に働いて呑気に遊んでいる間に。
 わたしはそんな女を見ると、それがたとえいけ好かない女だろうと、恋敵であろうと、駆け寄って抱きしめたい気持ちになる。
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by etsu_okabe | 2012-10-26 11:21 | 日々のこと/エッセー