小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

神社で願いごとはしない

 都心の林立するビルの谷間に、ふいに現れるこんもりとした森。緑化のために植えられた若々しい木々とは趣が違う、古めかしく湿気の濃い匂いがしてきたら、それはたいてい神社だ。東京には、こうした風景がそこここにあるのがとても好ましい。

 ところで、わたしは神社に参拝するとき、何も願いごとをしない。ポリシーでもなんでもなく、ただ社殿の前に立つと頭が真っ白になって、願いごとなどまるっきり浮かんでこないのだ。だからいつも手を合わせながら「どうもこんにちは」とか「ここはいいところですね」などと、心の中で言っている。
 それじゃあわざわざ神社に来てお賽銭まで入れる甲斐がないじゃないか、と思われるかもしれないが、これがそうでもない。
 昔、お祖父様が神主をしているという人と一緒にある神社を参ったときにこの話をしたら、
「それは正しい参拝です。神社に個人的な願いごとなど本当はするものじゃない。神社は心をキレイにしたり、エネルギーをもらったりする場所で、お参りもそのためにするんです。僕は疲れたなと思ったらこうやって通りがかりの神社に寄って、何も考えず手を合わせてリフレッシュや充電をします」
 と言われたことがあるのだ。これはちょっと嬉しかった。
 わたしは何の神様も信じていないが、それでも神社を見かけたら立ち寄って参拝せずにおれないのは、そうした「場」が持つなにかしらのパワーをどこかで信じているからだ。もしかしたらわたしには、彼の言った「エネルギー」を感じる力があるのかもしれない。そして神社の”使い方”としては、神様を信じてただすがるよりも、こちらのほうがずっと効果的なのではなかろうか。

 と書いてみたものの、「縁結びのご利益がある」などと聞くと、そのときだけは「良縁!」と心で叫んでしまうわたしである。一応独り者の乙女なもので。
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by etsu_okabe | 2012-11-13 15:51 | 日々のこと/エッセー