小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

寂しい花見

 随分と昔、もう15年以上前だろう、怖ろしく可愛い顔をし、ほっそりとした白い肢体を持ったエキセントリックな女友達と、今日のような雨のしょぼつく午後、閑散とした桜並木のベンチに座り、傘をさしながら鰻の肝串を肴に花見をしたことを思い出した。
 あれは高井戸辺りの、神田川沿いの遊歩道ではなかったろうか。その数日前、無職のくせに裕福な親からの援助で暮らしていた広尾から、わたしの住む吉祥寺へ遊びに来た彼女が、井の頭線から見えたその桜を間近で見たいと言って、もう盛りを過ぎた頃に、二人で待ち合わせたのだ。
 傘を閉じた彼女が、ベンチの背もたれに頭を載せて天を仰ぎ、雨より激しく降り注ぐ桜の花びらを顔に受けながら、
「空を飛んでいるみたい」
 と言った真白な横顔が、忘れられない。
 とても、寂しい花見だった。
 その後まもなく彼女のエキセントリックが進行し、親によって精神病院に入れられてから疎遠になった。しばらくして「退院した」と突然訪ねてきたときには別人になっており、仲違いの末に縁を絶ってしまったが、今頃どうしているだろう。去年、子供を産んだと噂を聞いたが。
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by etsu_okabe | 2013-03-24 12:12 | 日々のこと/エッセー