小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

サディストの王子様

 人さし指を額にあてた及川ミッチーばりのナルシスト・ポーズで顔を半分隠し、連行されていく少女監禁男。タイプではないのに、映像が出るとつい見てしまう。これがむくつけき男だったら、化粧の手を止めてまで見ることはないだろう。

 このサディスト、ハンサムなのだ。

 ハンサムだというだけで、女に不自由しないということにはならない。黙って置いときゃ美しいのに喋るとおバカさんだとか、センスがダサいとか、生活が破綻しているとか、なまじハンサムだと他の部分の点数が辛くなるので、逆にモテないことも多い。
 この犯人もそのテなのかなーと思っていたが、いやいや、そうでもないらしい。
 ある2つのニュース番組に、それぞれ別の「犯人の元同級生」という女性が出てきて、こんなコメントをしていた。

Aさん「“王子”なんて呼ばれて、変な人だなあ、気持ち悪いなあって、みんなで言ってました」
Bさん「顔はカッコイイしお金持ちだし、みんな“王子”なんて呼んで、きゃーきゃー言ってました」

 中学時代、この男はきっと本当にモテていたのだろう。本物の「気色悪い変人」であったら、“きゃーきゃー”はあり得ない。キムタクを「キモい」と毛嫌いしたり(わたしじゃないよ)、ヨン様を「不気味スマイル〜」と斬り捨てたり(これはわたし)する女子は山ほどいる。Aさんのコメントはそういう種類のものだ。

 そっちの道には全く詳しくないのだが、サディズムは「普通の恋愛は交歓できないけど、ちゃんとコミュニケーションをとれた相手でないと肉欲を昇華できない」人が、愛撫の代償として手に入れた道具の一つなのだと思っている。
 つまり、レイプなどの極悪犯罪とは別ということ。

 人間丸ごとサディストだった男は、モテまくっているうちは気持ちよくても、いざつきあってみると、わがまま勝手で思うようにならない女に、崇められていたはずの自分がどんどん貶められていくようで堪えられなかったのではないだろうか。
 本来、そういうものに反発しながらも恋人への執着を捨てられず悶々と苦しむのが恋愛の醍醐味というものなのだが、サディストにはその肝心の<恋愛感情>が無い。支配者という立場でしか男女の関係を築けない。発情もできない。わたしたちが「押したり引いたり見せたり隠したり」し合いながら育てていく愛情関係の代わりに、サディストは一方的な<調教>で主従関係を育てていく。

 この調教というものには、される側がする側に依存しているという前提が必要だ、というのもわたしの個人的な考えだ。
 拒否する相手を無視して無理矢理縛り上げて犯すレイプと違い、調教には前提に「合意」がある。手錠を持つ相手に、自ら腕を差し出すことから始まるのが、調教だと思うのだ。

 さて。今回発覚した監禁事件は、レイプだったのだろうか。
 男は「合意があった」と言っているらしいが、そんなことはどうでもいい。知りたいのは、監禁されていた女性たちの本音だ。もしくは、同居してからの心情の変化だ。
 ストックホルム症候群が働いて逃げられなかったとしても、そこに小さな満足感があったかなかったか。悲惨な現状に絶望する日々の隙間に、自分の全てを剥ぎ落とし他人に100%委ねる開放感のようなものがなかったか。しかもその他人が、野獣ではなく美しき王子様であったならば。

 とここまで書いてニュースサイトで記事を読み(うちにはテレビがない)、男の家から大量の調教ゲームが押収されたと知ってガ〜ッカリした。脳内プレイがその道の極みではないか!
 結局この男、ハンサムなだけのおバカさんだったのかもしれない。期待し過ぎちゃった。

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by etsu_okabe | 2005-05-14 12:16 | 日々のこと/エッセー