小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

『美味しんぼ』と風評被害について考えた

 『美味しんぼ』はこれまでちゃんと読んだことがないし、問題の号も読んでいないので、何も言えないなーと傍観していたのだが、ひとつ気になることがあったので、書き留めておくことにした。
 それは、フィクションの作品の中に挿入された作家の思想や正義は、"真実か誤りか" でジャッジすることだろうか、ということ。
 わたしは特段、美味しんぼ擁護をしようという気はない(何しろ読んでいないし)。ただ、ニュースでその概要に触れたとき、時に書き手、時に読み手である立場から、物語作品と作家の思想と読み手の感情について、考えないわけにはいかなかった。
 わたしが今福島に住んでいて、風評被害に苦しんでいたとしたら、その漫画を読んで「あったまくるー! こいつサイテー!!」と叫んでいたろうと思う。でも、一読者としてそう叫ぶことと、社会の一員として作品の抹消や改変や作家からの謝罪を要求するということは、まったく別問題だと思うのだ。

 それから「風評被害」について。
 嘘情報なんて、そこら中に溢れている。嘘を嘘と判断できれば、風評被害など生まれない。
 風評被害の一番の犯人は、嘘をついた一人の人物ではなく、それを受け止めて何かを載せたり曲げたりして「本当のこと」にして広めていく、たくさんの人間たちの口だろう。
 ではその口を止めるのは、難しいことだろうか。
 情報収集の手段が少なかった昔なら、それはなかなか消せる火ではなかったと思う。しかし今や、瞬時に情報を受け取れる時代だ。
 現にわたしは、その漫画に触れる機会もなく、その漫画を読んだ人から「嘘情報」を聞かされもしないうちに、「風評被害のもとになる漫画が出たよ」という情報を受け取った。
 おそらく多くの人が、そうだったろうと思う。
 なのに今もなお、世間が風評被害風評被害と騒いでいることに、素朴な疑問を感じる。
 もっと言ってしまうと、風評などよりも、そういう光景そのものが、わたしを不安にする。

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by etsu_okabe | 2014-05-15 21:01 | 日々のこと/エッセー