小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

憧れの苦手、着物。

 興味がないわけではないし、着ればそこそこ似合うだろうとも思うのだが、どうも縁遠い、着物。20代の頃に着付けを習いもしたが、続かなかった。代々引き継がれた着物が箪笥にあるような家に育った人などがする、着物ならではの優雅な所作を見るにつけ、わたしの領域ではないなと思ってしまう。
 そう、着物は所作と一体のお召し物なのだとわたしは思っていて、「そんな堅苦しく考える必要はない」「着ていれば所作もついてくる」「慣れだよ、慣れ」といくら言われても、着れば所作を「演じて」しまいそうな自分が、着る前から恥ずかしい。
 着物に負けているのだろう。気負っている時点でダメなのだ。
 しかし、着物のデザインや和柄は好きなので、そうした服はこれまでにも着てきた。下駄は普段履きとよそゆきを持っている。擦り切れるまで使って最近捨てたバッグは、和装用だ。
 そういえば、いかにも着こなしていそうな向田邦子さんは洋装の人で、亡くなる少し前のエッセイに、お祭りのため人に着物を着付けてもらう場面があって、へえと思ったことがある。

 それにしても、着付けを習うきっかけになった、バブルの熱に浮かされて買った着物一揃え30万円、結局袖を通したのは、たった一回だけである。稽古用に買ったポリエステル着物と母の古帯も、普段着に着れぬこともない。機会があれば、もう一度習ってみようか……と我ながら煮え切らない思いを残しつつ、ま、伸ばせば届くのに手が出せない、憧れているのに苦手なもの、なんてのがひとつくらいあるのもいいかなと、そのまま現在にいたっている。

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by etsu_okabe | 2014-11-08 12:28 | 日々のこと/エッセー