小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

女になるのは容易いが、女でいるのは至難である。

 昨年の秋場所に、二十数年来の相撲熱が再燃し、最近お相撲に関わる本ばかり読んでいる。
 そして今日、『一人さみしき双葉山』というノンフィクションを読んだ(工藤美代子著)。
 時代のヒーローであった一人の力士の物語だが、著者が追っていくのは、彼の孤独や悩みを支えていたであろう「名もなき女たち」。

 スポーツ選手、芸術家、役者……そういった人たちを支える人種がいる。タニマチ、スポンサー、パトロン、追っかけファンもそうだろう。しかし同じ"支える"でも「女」は別格だと思う。そこに横たわる「性」の深淵は、爪先をちょいと浸しただけでずるりと引き摺り込まれそうで、わたしはとても近づけない。
 この本の中に『勝負師は地獄を見た人間がなる』という、ある作家の言葉の引用があり、心に残った。ここで言う「地獄」とは、死に損なうような生命の危機のことだ。そんなものをかいくぐった男を支える女とは、どれほどのものを犠牲にできる人なのか。
 と考えたところで、「犠牲」と言ってしまう時点でわたしは失格だと苦笑いする。こんな人間は、合格などせぬほうがきっと良い。
 それにしても、燦然と輝く足跡を残した「勝負師」たちの、蹴散らした泥や砂を掃き清める女たちに思いを馳せるにつけ、女になるのは容易いが、女でいるのは至難であると思い、溜め息が出る。
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by etsu_okabe | 2015-04-09 03:56 | 日々のこと/エッセー