小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

東京都現代美術館『山口小夜子  未来を着る人』へ。

 東京都現代美術館『山口小夜子  未来を着る人』を観にいってきた。

 わたしにとってその人は、神秘的という言葉では足りない、人を超えたところにいるような人。"着る、纏う、装う"という表現で、まだ小遣いではハイブランドのブラウス一枚買えなかった小娘たちを、洋服に夢中にさせた人。強(こわ)い黒髪や細い目を、美しいと知らしめてくれた人。
 展示されたたくさんの重要な仕事は、わたしが知っているものから知らなかったものまで、そしてデビューの70年代のものから晩年のものまで、すべてが、胸を衝く新鮮さで迫ってくる。
 その量とパワーは想像以上で、15時頃入ったのに閉館の18時までに回りきれなかった。

 "わたしにとっての山口小夜子" は、もうひとつある。それは「葛湯」だ。
 昔「ニュースステーション」という報道番組に、<最後の晩餐>というコーナーがあった。久米宏がゲストと対談をして、締めに「あなたの最後の晩餐は?」と、死ぬ前に食べたいものを訊ねるのが決まりだ。そこで彼女が答えたのが、「葛湯」だった。フレンチのフルコースでも満漢全席でも高級ワインでも寿司でも蕎麦でもなく、葛粉を湯で溶いただけの、温かくて、優しくて、うっすらと白濁した飲み物。
 これを聞いたとき、わたしは、この人は普段から「死」を想っている人ではないかと思った。そして、彼女の訃報を聞いたとき、まっ先に葛湯を思い浮かべた。
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by etsu_okabe | 2015-04-11 23:28 | 日々のこと/エッセー