小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

授賞式

 昨晩(5月14日)は、『幽』文学賞と『野性時代』のフロンティア文学賞の合同授賞式&パーティだった。
 『幽』文学賞は、昨年まで『幽』怪談文学賞という名で、わたしは2008年の第三回で短編賞大賞を受賞し、翌2009年の春、単行本デビューとともに授賞式を開いていただいた。以来、毎年この時期に授賞式の招待状が届くたび、デビューさせてくださった選考委員の先生たちやメディアファクトリー(現KADOKAWA)の編集者の方たち、そして同じ賞でデビューした作家さんたちに、今年は何が報告できるかと、戦々恐々たる気分になるのである。

 今年の会場は、目白の椿山荘。従弟の結婚式で一度来たことがあり、電車と徒歩などという庶民は坂道から転げ落ちてしまえといわんばかりの山城のごときホテルと知っていたので、奮発して飯田橋からタクシーで向かう。早めに行って庭園を堪能するつもりだったが、仕度に手間取りギリギリの到着で断念。
 入るとホール入口に歴代受賞作が並べられており、拙著『枯骨の恋』を見つけて、しばし六年前の初心を思い出す。朝から雨の降る、心細くなるような午後だった。

 『幽』の選考委員の先生たちが集まる控え室に案内してもらい、挨拶をする。「おかげさまで、なんとか書き続けています」と言うのが精一杯の体たらく。「なんとか」という言葉の中には、この一年の七転八倒がぎゅっと詰まっている。来年は、何と挨拶できるだろう。胸を張ってここに来たい。
 控え室には今年の受賞者、唐瓜直さんもいらっしゃったので、お祝いの言葉に続けて、「受賞スピーチ、楽しみにしてます」と朗らかにプレッシャーをかけておく。また一人、ライバルが増えたのだ。

 などしているうちに開会。先にフロンティア文学賞の授賞式があり、続いて『幽』文学賞が厳かにとり行われる。当然のこと、『幽』のそれは例年通り、オドロオドロしい演出付きだ。
 選考委員を代表して行われるスピーチは、今年は京極夏彦さんだった。この日華々しく飛び立つ新人作家に向け、だけでなく、すべての書き手に向けた、厳しく辛辣な、しかし先達としてこの上なく頼もしい、とても重たい言葉だった。

 パーティ散会後、移動して椿山荘の中のバーへ。格式の高いホテルのバーらしく、天井の高い重厚なインテリアに、キラキラと輝くシャンパングラス。しかし頭の中には、書きかけの小説のことがぐるぐると巡る。ならばさっさと帰ればいいのに、楽しくて結局三次会まで。

 帰りの電車。
 京極さんの言葉の中で、ある考え方を批判したあとに続けて、「そんな考え方で書いていても、作家を続けてなどいけません。もってせいぜい5年です」というのがあった。
 わたしはデビューして6年。瀬戸際なのは自覚している。だからよけいに、胸にズサズサ突き刺さった。いろんなものが刺さった胸で、来年の自分を思う。なにくそ。
[PR]
by etsu_okabe | 2015-05-16 01:24 | 日々のこと/エッセー