小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

27歳のオトコ

「27歳か。その歳の男の子って、迷っているのよね」

 32歳のとき、数年振りにやっと落ちた恋で、5歳年下の相手に地獄を見せられて苦しんでいたとき、年上のおねえさんに言われた言葉だ。
 わたしの新しい恋人には、わたしより10歳も年下の恋人がいて、3年もの間大事に大事に育てた関係があった。最悪なことに、彼はわたしに恋をしておきながら、その関係も捨てきれずにいた。
 あの頃のことを思い出すと、今でも軽い吐き気をもよおす。わたしは顔中に吹き出物を出し、ガリガリに痩せ細り、大袈裟でなく本当に毎日泣いていた。一方、彼の方は二度も胃に穴をあけた。それでも離れられず、めそめそドロドロの状態を数年続けてしまった。

「27歳か。その歳の男の子って、迷っているのよね」

 そういえばそうだなと、後になって思う。

 夢だった職業に就き、幸せな家庭があり、手広く商売をしている親の元で将来は安泰。明るくハンサムで女性にモテて、得意満面に見えた27歳のドラム講師は、何を血迷ったか19歳の小娘の誘惑に乗った。
 生徒として妻のいる自宅へ小娘を連れて行ったり、子供と遊ばせたり、夏合宿には小娘と妻を同じキッチンに立たせたりした。
 何も壊したくないと言いながら、あれほど信頼からほど遠い小娘を使って、一体何を試そうとしていたのだろう。

「27歳か。その歳の男の子って、迷っているのよね」

 十代から追いかけていた夢に破れた27歳の男は、一緒に暮らしていた女に去られ、友達にも見捨てられ、何もかも失くした揚げ句に自分をも失ってしまった。
 <まだ>27歳だったのだ。それからだって何でもできた。それなのに、男が別れた女に真夜中の電話で話すのは、夢に溺れていた頃の思い出話ばかりだった。そのうち酔って怒鳴りだし、脅し、呪い、最後には泣きながら謝って電話を切る。やりきれない暁だった。
 <まだ>27歳だったのに。
 
「27歳か。その歳の男の子って、迷っているのよね」

 わたしにとって思い出深いオトコたちが、揃いも揃って27歳だった。
 一体この歳の男には、何が起きるのだろう。
 それに巻き込まれた19歳と27歳と32歳のわたしには、何か因果があるのだろうか。
 そう言えば、わたしが生まれたとき、父は27歳だった。
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by etsu_okabe | 2005-08-12 02:13 | 日々のこと/エッセー