小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

縦の旅

a0013420_22153959.jpg 子供の頃、テレビなんかを見ながらふと「一億年くらい前、この場所で恐竜がいびきをかいて寝ていたかもしれない」という妄想でトロ〜ンとなることがしばしばあった。知恵も力も金も持たない子供の、小さな旅だ。横軸への移動ではなく、縦軸への移動。脳内ジャーニー。
 『アースダイバー』は、そんな時分の感覚を思い起こさせる一冊。
 著者の中沢新一氏が旅するのは現代の東京なのだが、手に持つ地図は縄文時代のもの。つまり氏は、土地から土地への横移動をしながら、深い縦移動を試みているわけだ。
 縄文の頃、東京はリアス式海岸のように入り組んだ入り江と岬でできており、岬は陸と海との「境」という意味で特別な場所として認識されていた。人が祀ってきたその“神聖”な場所が、現代にも影響を与えているという視点。なんというロマンチシズムだろうか。
 わたしは、オカルティックは好きだけれど信者ではない。でも、人の「信じる」気持ちが結集して紡ぎ出す絶対的なパワーは信じている。そのパワーが、縄文の時代から平成の現代まで垂直に繋がっているという考え方には、強い憧憬を抱かずにはおれない。
 わたしもまた、小さな『アースダイバー』となって、東京を旅したくなった。
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by etsu_okabe | 2005-09-04 22:16 | 日々のこと/エッセー