小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

暴力と音楽

 音楽を愛する人に悪人はいない、などという幻想を持っているわけではない。ただ、近頃ライブハウスで見かけるバンドマンたちがやたらと“仲がいい”のを、ほんの少し驚きの目で眺めていたわたしとしては「バンドをやる子にこういう手合いもいるのか」と、意外な感想を持ったニュースだった。

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 複数の人間が集まれば軋轢も起こるし、これといった理由がなくても好きになれない、反りが合わないという人間も出てくる。これが仕事の仲間なら、目をつむってこらえなければいけないこともあろう。プロのバンドであったなら、爆発するまで我慢しなければならないことだってあったかもしれない。
 しかし、こやつらただのアマチュアバンドなのだ。気に入らなければクビにすればいいし、自分一人だけ気が合わないと分かれば去ればいい。なぜそうしなかったか。なぜスタジオでリンチに及ぶまでの関係になったか。

 いい音楽を作り上げようという共通項でだけうまく繋がり合えれば、他で喧嘩しようが私生活が冷えていようが、バンドは成功する。トップに上り詰めた漫才コンビが歴代不仲であることは有名だ。
 このリンチバンドは、きっと「いい音楽を作ろう」などという集まりではなかったに違いない。なんとなく気が合いそうだから、あの楽器ができるからと集まって、音楽以外の様々な共通項(女やら遊びやら趣味やら)での繋がりを持ち、そこから外れたか、もしくは意図的に外された一人をイジメることでまた新たな共通項を得て、繋がって楽しむ集まりだったのだ。

 音楽を演奏していると、自分の意志とは関係なく何かしらの力が働いて、まるで演奏させられているような感覚に恍惚となる瞬間がある。観客にもそれは伝わる。そこでライブの一体感が生まれるのだが、バンドなどの合奏であれば、その恍惚感は何十倍も大きいものだろう。
 彼らにも、そんな力が一度でも降りてきたことがあるのかな。
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by etsu_okabe | 2005-11-29 21:55 | 日々のこと/エッセー