小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

有名と責任

 ロッテリアでコーヒーを飲んでいて、男子高校生のグループから「すみませんお姉さん、煙草くれませんか」と言われたことがある。全員、詰襟の制服姿。
「これでよければ」
 細身のメンソールを一本、わたしは差し出した。
 身体には悪いかもしれないが、喫煙を「悪事」とは思っていなかった。そもそもわたし自身が17歳から喫煙していたのだから、彼らに対して「高校生だからダメ」という資格はない。まだ自分も20代だったので、深く考えることもなかった。

 あのときもし、彼らの中に高校球児がいたら。
 街の人たちから注目されているプチ有名人がいたら。

 十代のわたしだったら、「世間なんてクソ食らえだ!」と、そこにいる全員に煙草を配ったかもしれない。
 今は「有名って、思いも寄らない責任を背負わされているんだよ」と、教えるくらいのことはできる大人でいたいと思う。それが大人の役目という気がする。だって、子供ってそういうところが“弱い”から。“甘い”と言ってもいい。
 ただの学生だったら、「こらこのクソガキ!酒煙草なんてものは手前ェで稼げるようになってからやりやがれ!」と、親に張り手のひとつも食らってぺろっと舌を出して終ることが、頑張って優勝して有名になったおかげで、これほどの責任を負わされる。
 そういうことがしっかりと分かるのは、世の中に出てからだ。

 子供というのは、調子づくものだ。
 学生の場合、普段締めつけられている分だけ、解放されたときの爆発力は大きい。運動部ならなおのこと、ハメをはずす機会があればとことんはずしたくなるだろう。どれだけはずせるかが、度量の大きさとして測られることだってある。
 ましてや、街を歩けば注目を浴びる有名人になったのだ。調子づくなと言う方が無理という気もする。
 テレビに顔も名前も出して大々的に持ち上げるのなら、期待はずれのことをしでかしたときに落とされるドン底のことも、大人がちゃんと教えておくべきだが、きっとまだ教えても分からない子供だろうから、“有名”になんてしないであげればいい。

 へんなまとめになってしまった。さ、大人は一杯飲んで寝るとしよう。

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by etsu_okabe | 2006-03-05 23:09 | 日々のこと/エッセー