小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

恋愛地獄

 最近彼女ができた、という景気のいい話を2件、いずれも30代の男友だちからたて続けに聞かされた。
 いくつになっても、独身の男友だちに恋人ができたり結婚されたりすると、女友だちの場合と違って素直に喜べないダメなわたしだが(なんとなく面白くないんだもの~ブチブチ)、今回のうち1件は、本当に心の底から、へたをすればじんわり涙が浮かんでしまうくらい喜んだ。
 なぜならば、わたしは彼の「暗黒時代」を知っているからだ。

 ここ数年、生活エリアもパターンもまったく違う彼とは、たまたま二年続けて夏の土用に会って鰻を食して以降、その季節になるとどちらともなく連絡をし、近況を報告し合っている。もちろん時間が合えば、会って一緒に鰻を食う(当然お酒つき)。
 そんな、ちょっと遠くから思い合う間柄だからこそ、身近な友だちや同性の友だちには言えない悩みや苦しみも、話すことができたのだろう。
 数年前に聞かされた彼の恋愛地獄は、かなり厳しいものだった。話を聞きながら、かつての自分の地獄と重ねて、もらい泣きしそうになったほどだ。
 わたしは女なので、当事者の頃はあたり構わず泣き喚いたが、男の彼はそこをぐっと堪えている。それがまた痛々しくて、人ってなんでこんな思いしてまで人を好きになってしまうんだろうと、神様を怨んだものだった。

 わたしも44年女をやってきて、まあそれなりの恋愛地獄をいくつか味わった。しんど過ぎて記憶から抹消されているようなのもある。
 一番辛かったのは抹消されているので置いといて、二番目は、言葉にすると珍しくもない、いわゆる「三角関係」だった。わたしと、5歳年下の男と、さらに5歳年下の女性の三つ巴が、あれは何年続いたのだったか。
 わたしの顔にある「しみ」は、そのときストレスで作った吹き出物の痕跡だ。男も二度ほど胃に穴を開けて病院送りとなった。何の非もないのに10歳も年上の女に恋人を奪われたあの女の子は、三人のうちで最も傷つき、最も苦しんだに違いない。
 とにかく、文字通り命を縮めるような恋愛だった。

 終わってみれば、なーんであんなに執着したんだろ。とっとと「いち抜けた~」して、次の恋への旅に出れば良かったのに、と思う。
 まあ、それがなかなかできないからこそ「地獄」なのだが。

 苦しい恋愛地獄を経て、ようやく穴蔵から抜け出したわたしの友だちが掴んだ新しい恋は、どうやらキラキラ光り輝く、天国のようなものらしい。もらったメールも女子高生のそれのように、キラッキラふわっふわしていた(笑)。
 これは、あやからなくては。
 今抱えている重た~~~い案件を片付けたら(ふえーん)、きっと鰻を食べに行こうと約束した。冬の鰻もまた旨かろう。肝の串焼きできゅっと熱燗をやりながら、のろけ話を聞いてやろうじゃないか。


※もう一人の友だちの新しい恋は、セックス目的で家に連れ込んだ女の子とまさにコトの真っ最中、彼女の笑顔を見て落ちてしまったという、色んな意味でショッキングな話だった。ふーむ、わたしもまだまだだなあ……。
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by etsu_okabe | 2009-01-26 15:45 | 日々のこと/エッセー