小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

反復夢

 昔から、繰り返しみている悪夢がある。それは、「電話がかけられない」夢。
 急いでいるのに、どうしても途中で番号を間違えてしまう。ものすごく焦りながら、べったりと汗の滲んだ手で受話器を握りしめ、何十回とダイヤルを繰り返すという、イヤな夢だ。
 見始めた頃は「ダイヤル式電話器」だった。今度こそはとジーコジーコ順調に回すのだが、最後の数字を間違える。かけ直す。ジーコジーコ、また間違える。公衆電話だったこともある。その後プッシュボタン式になった。ピッポッパッポ、ピッ、ああっ間違えた! ピッポ、ピッ、ああまたっ。
 そしてとうとう先日、携帯電話の夢を見た(電話嫌いなので、携帯を持ったのはわずか3年前なのです)。舐めるようにボタンを凝視し親指を動かすが、どうしても押し間違う。あと1つ、というところで隣のボタンを押してしまう。何度も繰り返すうち、胃がキリキリ痛みだす。半べそをかきながら「もう、いやーっ」と叫び出しそうになったところで、目が醒める。全身、イヤな汗にぐっしょりとまみれている。

 夢判断的には、おそらく「電話はコミュニケーションの象徴。あなたは今うまく人とコミュニケーションがとれないことで、ストレスを受けています」とか、「あなたは今誰かと繋がりたいと、強く欲しています」ってなところだろう。
 以前にも書いたように、わたしは自分が誰かに100%理解されるとはさらさら思っていないし、そんな期待もしていない。そう考えるようになってからは、強く自己アピールすることもなくなった。勘違いや誤解をされていると分かっても、ムキになって訂正したり言い訳したりもしない。
 もしかしたら、そのことが知らないうちに自分を苦しめているのだろうか。

 最近、激しい「自慢話満載の自己アピール攻撃」に辟易させられることが続いている。
 鼻の穴を膨らませた得意顔に「羨ましいでしょ」「感心しなさいよ」と、でかでかと書きながら披露される自慢話。しかしそのどれもこれもが、わたしにとって魅力のないものなので、聞いていてつらい。「全く魅力に感じないもの」に対して「羨みなさい」と強制されることは、本当にしんどい。

 頭のいい人は、その価値の分からない人にいくら自慢をしても何も生まれない、ということを知っている。だから、そんな下らない自慢話などしないものだ。
 頭のよくない人は、その価値を分からぬ相手に「分かれ! そしてわたしを羨め!」と強制してきたり、その価値を分からないということを「こんなことも知らないの?」とバカにしてくる。まことに迷惑。

 今わたしが辟易しているのは、まさにその「頭の悪い人の自慢話」だ。

 キヨシローとジャムったことがあるとか、小笠原にいつでも泊めてもらえる家があるとか、裏社会の闇ルートを知っているとか、もうすぐメジャーデビューするとか、クジラに触ったことがあるとか、寺山修司と飲んだことがあるとか、そういうことなら身悶えするほど羨ましいのだが、『何とかいう有名人と知り合いである』とか『都心の一等地に持ち家がある』とか『大企業に勤めている』とか『下着は高級フランス製しか身につけない』とか『友達はみんな一流』とかいうことに、わたしはちっとも感心できない。
「それ、興味がないから褒めてあげられないよ」と態度で示しているつもりなのだが、どうも通じていない。自慢話はまだまだ続きそうだ。

 今夜もまた、あの夢を見そう。た〜すけて〜。
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by etsu_okabe | 2004-08-01 18:21 | 日々のこと/エッセー