小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

怪談、それは文学の極意。「怪談文芸ハンドブック」を読む。

a0013420_123797.jpg 幽・怪談文学賞を受賞していながら、まことに恥ずかしい話、わたしはそれほど怪談やホラーを読んでこなかった。これまで書いてきた小説も、男と女がぐちゃぐちゃ絡まるようなものばかりだったから、受賞作を単行本にするためにあと数百枚分も怪談を書かなくてはならないと知ったときには、正直呆然としてしまったほどだ。
 かと言って誰かが代わりに書いてくれるわけもなく。この数か月の間、仕事以外はほとんど家を出ずにうんうん唸っていたところ、『幽』編集長の東雅夫さんが怪談文学指南書を執筆中と知り、本当にもう、すがりつきたいような気持ちで待っていた。
 それが「怪談文芸ハンドブック 愉しく読む、書く、蒐める」である。
 拝読できたのは第一稿を出し終えたあとだったが、この時期これを手にできたということは、わたしにとって大変な幸運だった。それがどれほど大きなことだったかは、写真を見ていただければ分かるだろう。わたしは本を汚すことができないタチ(子供の頃は本をまたいでも叱られた)なので、気になるところには付箋紙を貼るのだが、いやはやこの通りである。

 この本は、わたしのように怪談を書こうという人にとってはこの上ない参考書である。怪談の定義から歴史、先人たちが残した怪談名作の読みどころまで、知りたかったこと、知っておくべきことがぎゅぎゅっと詰まっている。
 そしてまたこの本は、読書好きにとって最高の怪談ガイドブックだ。これ一冊で、何十冊分をお腹に入れられることか! 珠玉の名作から引かれた一節とそれにまつわる話や解説を読んだだけで、ひとつの濃厚な物語をまるっとすっかり堪能したような高揚感に包まれてしまう不思議は、東さんの手腕と怪談文学の奥深さゆえだろう。

 本の中で何度か出てくる佐藤春夫の言葉「文学の極意は怪談である」。この意味がよーく分かった。
 ひと段落したら本を抱えて旅に出る予定なのだが、これでもう持参する本は決まったようなもの。ところで、怪談本を何冊も背負った女に、旅先でのアバンチュールはあるでしょうか?
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by etsu_okabe | 2009-04-05 03:15 | 小説関連の活動など