小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

ひとりぼっち

a0013420_7281166.jpg 世間は大型連休で盛り上がっているようだが、わたしにはたった一日しか休みはない。
 さて、その貴重なホリデーをどうしようかと考えて、繰り出したのが鎌倉~江ノ島への小旅行。
 朝早く吉祥寺を出、北鎌倉で電車を降り、円覚寺、東慶寺、名月院、建長寺、浄智寺、ひと山越えて銭洗弁天、佐助稲荷と巡って、鎌倉に出た。
 そこから江ノ電に乗って江ノ島へ。山と海と鎌倉ビールと江ノ島ビールからたっぷりパワーをもらって、江ノ島の橋を戻ったのが21時過ぎ。

 この辺りにくると、思い出すことがある。

 わたしには、小さい頃から妙な癖というか性質があった。家族や親戚に囲まれてみんなから愛されなんの心配もない幸せとしかいいようのない状況の中にいると、胸がむずむずとしていたたまれなくなってしまうのだ。
「幸せすぎて怖いってやつ?」
 と良く聞かれるが、そんな甘ちょろいものじゃない。その胸苦しさは、たとえようもなく気持ち悪いもので、溜まりすぎると「うわああああああっ」と叫びだしそうになるほどだ。
 子供の頃はそういうとき、みんなのいる幸福の詰まった部屋をそっと抜け出して、誰もいない暗い部屋に避難したり、庭に出て気を紛らわせたりしたが、その程度ではすっきりすることがなかった。本当は一人でどこかに飛び出したくて、しかたなかった。
 高校生でそれになったとき、衝動的に学校をサボり、電車に飛び乗った。上野行きだった。
 上野は家族で毎年動物園に来ていたから、そこではダメだった。乗り換えて、横浜方面に向かった。今から思うと、あれは関内か桜木町だろう。ふらっと降りると、どこを見渡してもわたしのことを知る人がいない。道も街も何も分からない。
 胸の重苦しさが、すーっと晴れた。
 それ以来、高校生の間に何度もこの小旅行は敢行された。横浜、鎌倉、茅ヶ崎、江ノ島。いつも海に向かったのは、神戸で育った思い出がそうさせたのか、それとも海のない群馬から別世界に行きたかったからか。

 高校を卒業し、車と免許を手に入れてからは、それにドライブも加わった。一人暮らしを始めてからは、あの胸苦しさに襲われることもあまりない。それでも時々、むしょうに「ひとりぼっち」」になりたくてたまらなくなる。だからわたしは旅に出る。
 いつまでたっても結婚する気になれないのは、この癖のせいかも。
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by etsu_okabe | 2009-05-05 07:57 | 旅のこと