小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

授賞式の長い一日

 昨日6月1日(月)は、第3回『幽』怪談文学賞授賞式の日。
 朝7時頃起床。昼頃まで次号『幽』の<厠の怪談>の原稿を推敲し、メールで送ってからブランチ。食べながら授賞スピーチを考えるが、厠の余韻のせいかまるっきり浮かばず。ああこういうの、苦手。
 結局あたりさわりのない短い文章を作ってプリントアウトして小さく切りとり、手帳に挟んで時計を見れば、うわ、やばい時間! 慌ててシャワー、そして化粧。ああ、寝不足がたたってぶつぶつだらけー。エステくらい行こうと思っていたのになあ、などと言いながら、ちょい厚めにファンデを塗ってみる。
 ばたばたと井の頭線に乗り、渋谷までの間にスピーチ再考を試みるが、頭からっぽ。山手線に乗り換えてひと駅、約束の時間ちょうどに恵比寿に到着。
 ウエスティンホテルは以前、母を送ってきたことがあるだけで、中に入るのは初めて。ここで授賞式があると知ったとき、いっちょ当日泊まってみるか、エステなんかもしちゃったりして! などと考えたが、値段を見て鼻血が出そうになり、断念。くそーいつか見てろよ~~~。
 ホテルに到着したのは、式本番よりより2時間半も前。わが故郷群馬が誇る地元紙「上毛新聞」が取材に来てくださっていて、インタビューを受けたのである。記者の方も群馬出身で年齢も近く、「●●中学? じゃあもしかして●●●●さん知ってる?」的な、非常にローカルな話題で盛り上がってしまう。
 記者さんに、著書へのサインを頼まれて狼狽。「えええ、書き方分かんない~」。担当編集者のKさんが、懇切丁寧に教えてくださる。年下なのに、わたしは時々彼女がお母さんに思えてしまう。やっとこさっとこ書いて、うわ、字、へたくそ!とまた狼狽。。。
 んなことをやっている間に、控え室には岩井志麻子さん、木原浩勝さんが現われ、くらくら。取材を終えてご挨拶し、ド緊張しながら席に座っていると、京極夏彦さん、高橋葉介さん、東編集長もみえた。ああもう誰か助けて。この頃にはもう、スピーチのことなど何百光年も彼方・・・・・・ふっ、なるようになるさ・・・・・・。
 しばらくして、リハーサル開始。どひゃあ。こんなに広いのー! こんなとこ(ステージ横)に座ってなきゃいけないのー! などと胸の中で叫ぶ間にも、リハは着々と進んでいく。やがてわたしの名が呼ばれ、ここにきて、いやでもスピーチのことを思い出させられる。どーしよー。
 リハーサルを終えて再び控え室に。中の絢爛豪華さにもう息ができないので、廊下に出てソファーで靴を履き替え、しばらくそこにいることに。ふと思いついたことをスピーチメモに書き足したりしてみる。
 そして本番前の会場へ。
 なんとまあ、すごい人~~~~~。式が始まるまで、招待した人たちを見つけては走り回り、挨拶する。群馬から来てくれた友人とは、何年ぶりかの再会。わーきゃー言っているうちに、いよいよ本番・・・・・・。
 ダ・ヴィンチ文学賞授賞式が終わり、客電が消えて会場がざわっとなったところで『幽』怪談文学賞の授賞式。わたしの左手にはできそこないのスピーチメモ。まじでどーしよ。
 東さんの楽しく温かいお言葉のあと、岩井志麻子さんのお言葉。最初からかっとばしてくださったが、胸にしみる「本音」の言葉に打たれ、よし、自分の言葉で語ろうと決意。
 いよいよそのとき、しどろもどろのめろめろめためたながら、自分の言葉でなんとか短いスピーチを終えた。今となってはもう、何をしゃべったんだか。
 授賞式のあとは、懇親会。お客様たちが食べて飲んで歓談されている中、ありがたいことに、たくさんの方が声をかけてくださり、ご挨拶をすることができた。
 ぽーっとしている間にパーティーは終わり、二次会、そして三次会・・・・・・。気がつけば3時過ぎ。方向が同じの行灯製作者の天野行雄さんと、てのひら怪談でお馴染みの山下昇平さんとタクシーに乗り込み、帰宅。
 夢のような一日が、長いなが~~~~~い一日が、終わりました。

 あの場でたくさんの「おめでとう」をくださった皆様、本当に本当に、ありがとうございました。

 歴代受賞者の皆様にもお会いできて、嬉しかったです。なのにわたしったら、連絡先をまったくうかがっておらず、お礼の連絡もできない始末。次にお会いできるのを、楽しみにしております!


a0013420_364413.jpg 今朝起きたら、前橋の友人から携帯にメールが入っていた。清志郎が死んだ日「俺の青春が終わった」とひと言メールをよこした男。『枯骨の恋』のエピソードに、少なからず関わっている昔の仲間だ。開いてみると「すげーじゃん! 上毛新聞に写真入りで載ってたぞ。サインくれ!」。奥様にお味噌汁をよそってもらいながら子供たちに「最近学校どうなんだ」とか言って新聞広げたら「うお! えつぼー!(←当時のわたしの愛称)」。目ん玉ひんむいてる彼の顔が思い浮かんで、吹き出してしまった。おそらく作品はまだ読んでいないのだろう。読んだらなんと言うかな。よしと言ってくれるか、はたまた絶交されちゃうか(笑)。「そんなことよりお前太ったな」とか言われそうだ。
 そのあと、前橋の従姉たちからも「見たよ!」とメール。新聞のことは誰にも言っていなかったので、みんな驚いてくれて、それがおもしろ嬉しい。
 その頃実家では、母のところにじゃんじゃん電話やメールが入っていたそうだ。上毛新聞、おそるべし。記事掲載、ありがとうございました!!


 体を起こせたのは夕方近く。昨日会場で預けた荷物をとりに実家に向かう道すがら、吉祥寺の主要書店に寄ってみる。あったあった、わたしの本!
「近所なもんですっぴんですみません、いつもはもう少し綺麗なんですよ」とどうでもいい言い訳をしながら、書店員さんにご挨拶。写真を撮らせていただいたり、POPのお願いをしたり。ここもまた、ローカルパワーに期待しちゃってるわたし。

 じんわりじわじわ、感動の波が押し寄せてきた。

⇒岡部えつ『枯骨の恋』6月5日発売
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by etsu_okabe | 2009-06-02 23:59 | 小説関連の活動など