小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

へべれけ女を、可愛いって思える?

「あれはちょっとみっともなかった。恥ずかしかったよ」
 遠い昔、しこたま飲んで酔っ払ったわたしを見た恋人から、翌朝ちくりと言われたことがある。
 前後不覚になって裸になったわけではない。誰かを傷つけたり、因縁をつけて絡んだわけでもない。わたしは普段からおしゃべりだが、酔うとそれに拍車がかかり、さらに饒舌になる。楽しい酒宴ならなおさらだ。テンションが上がって、自分の思いのたけを洗いざらい喋り倒してきゃあきゃあ笑い、ときには泣き、本人は大変いい気分。たいてい、そういうお酒だ。
 そりゃあもちろん、ハメを外し過ぎてしまったと、翌日反省することもある。下戸の友だちから「あんた昨日は完全に酒に飲まれてたよ、気をつけな」と叱られて、落ち込んだこともある。
 でも、でも。恋人からの「恥ずかしい」は、反省や落ち込みだけでは済まない、ちょっとやそっとじゃ立ち直れないくらいショックな言葉だった。わたしの言動が、人に恥ずかしい思いをさせてたなんて・・・・・・。
 以来わたしは、男の人とお酒を飲んでたいそう酔ってしまうと、すぐに「あー、嫌われたな」と思うようになった。ちなみに、「嫌われたくないから酒は控える」というのはわたし的マニュアルには書いていない(ふははは)。

 ところがだ。先日行った与那国でダーリン(宿の主人)と差し飲みしているときのこと。
 いいかげん酔っ払っているわたしに、彼が「もっと飲め。もっと酔っ払え」とどんどん泡盛をすすめるので、ふと気になって聞いてみた。
「なんでわたしをこんなに酔っ払わせて平気なの」
「なんでって、何が?」
「いやじゃない? べらべら喋ってうるさいし」
「誰がいやか。女の酔っ払いは可愛いさ」
「うそお!? 可愛い? こんな酔っ払いが? みっともないと思わないの?」
「みっともないことあるか。どんなにべろべろになったって、女の酔っ払いは可愛いさー」
 彼曰く、女の酔っ払いはどれほど泥酔しようとも、「もっと飲め」と言えば飲み、「やめとけ」と言えばやめ、「もう寝なさい」と言えばころんと横になるので、可愛くて仕方ないのだそうだ。
 理由はともかく、ほぼ泥酔に近いわたしを(そして女全般を)「可愛い」と思う男がいるということに、わたしはえらく感激してしまった。だからこの人はモテるのだと合点もいった。宿のリピーターは圧倒的に女性が多い。

 同じ酔っ払い女を見て、可愛いと感じる人とみっともないと感じる人がいる。それは、立ち位置の違いではないだろうか。彼女の身内に立っていれば愛おしく思え、世間の側に立っていれば恥ずかしく思うだろう。
 恋人であるならば、身内に立つのが正しい。
 振り返ってみると、そういう男性は時々いた。揃っていい男だ。どうして今まで、そういう人とつきあえなかったんだろう。こんな歳になって、自分の見る目のなさに嫌気がさす。
 次に誰かを好きになりそうになったら、大いに酔っ払って相手を見定めよう(やれやれ、結局飲まなきゃならんのか。てへ)。
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by etsu_okabe | 2009-07-09 02:12 | 日々のこと/エッセー