小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

カテゴリ:小説作品( 23 )

a0013420_831522.jpg5月11日に発売されています『憑依―異形コレクション』(光文社文庫)に、『奇木の森』という短編を書かせていただいています。

「憑依」というお題が意外にも難しく、苦しんで書きました。
他にも素晴らしい「ぞぞぞっ」の作品がぎゅ~っと詰まった一冊。それもそれぞれ違う味と香り。
カバーの髑髏の美しさも見逃せません!




【収録作品】
一年霊(春日武彦)
奇木の森(岡部えつ)
溶ける日(松村比呂美)
地蔵憑き(朱雀門出)
ついてくるもの(三津田信三)
飢え(真藤頑丈)
修羅霊(しゅらだま)(入江敦彦)
ゴルゴネイオン(黒史郎)
首吊り屋敷(田辺青蛙)
穴(飛鳥部勝則)
やどりびと(福澤徹三)
抜粋された学級文集への注解(井上雅彦)
眼神(マナガミ)(上田早夕里)
箸魔(平山夢明)
憑依箱と嘘箱(岩井志麻子)
スキール(町井登志夫)
陽太の日記〈抜粋〉(菊地秀行)
生きてゐる風(朝松健)
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by etsu_okabe | 2010-05-26 08:33 | 小説作品
 テーマは「厠」。
 という原稿依頼を怪談専門誌「幽」から受けたのは、昨年、デビュー短篇集の「枯骨の恋」を火事場の馬鹿力で書き上げ、絞りカスのようになっていたときだった。
 もう何も出ませんよ……。これがそのときの、正直な気持ち。
 しかしこれは、わたしを拾ってくれた「幽」での初仕事。なんとしてでもいいものを書き上げねばと、絞りカスをさらにキュキュ~っと絞り上げて書いたのだった。
 原稿を渡すとき、担当のKさんから「このテーマは人気があって、他の作家さんから私が書きたかったって声がいくつもあったんですよ」と聞き、ああ、そんなオイシイ特集で書かせてもらったんだという嬉しさ半分、だとすると皆さんの目は厳しいだろうなあという怖さ半分の、複雑な気持ちだった。

 そしてこの人気テーマが、スゴイ作家陣を集めた単行本になった。そしてそこに「幽・第11号」の厠の怪談特集に掲載されたわたしの作品も、入れていただくことになった。

『厠の怪 便所怪談競作集』
京極夏彦、平山夢明、福澤徹三、飴村 行、黒 史郎、長島槇子、水沫流人、岡部えつ、松谷みよ子/著
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 先日、「カバーができました」と上の画像を送っていただいたとき、松谷みよ子さんの名を見て、あまりの感激に悲鳴を上げてしまった。
 単行本のお話があったとき、もしかしたら松谷さんが、とは聞いていた。それだけでも心臓がバクバクで、いやいやぬか喜びしちゃいかんと、聞かなかったふりをしていた。それほどわたしにとって、松谷みよ子さんは大きな人なのだ。
 わたしは松谷さんの作品を、そう多く読んだ読者とはいえない。しかし、家にあった松谷みよ子全集の「かきのはっぱのてがみ」と「コッペパンはきつねいろ」は、それはもう何度読み返したか分らない。司修さんの挿絵は暗く、お話も大人っぽいものが多くて、松谷さんの本は、他の絵本とはまったく違う匂いをはなっていた。わたしがよく言う「地べたからの視線」は、もしかしたらここが出発点だったかもしれない。ささやかな日常から切り取ったはっとするような小さなできごとを物語にした作品に、特に心を惹かれた覚えがある。

a0013420_2135895.jpg その、憧れの松谷みよ子さんと、一つの本に自分の作品が収まっている。
 今もまだ、胸がいっぱいなのに、現物を見てしまったらどうなることやら。
 『厠の怪 便所怪談競作集』、4月25日発売です。
 >>ビーケーワン

※右の写真は、今回のことで大騒ぎして電話したら、速攻で実家から送られてきた写メ。明日帰るので、久しぶりに読もう。
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by etsu_okabe | 2010-03-21 21:15 | 小説作品

枯骨の恋

a0013420_2228369.jpgタイトル:枯骨(ここつ)の恋
著者: 岡部えつ
出版:メディアファクトリー
発売日:2009年6月5日

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【短篇集『枯骨の恋』作品紹介】

『枯骨(ここつ)の恋』
あきらめきれもせず、かといって新たな野望を燃やせもしない中年独身女、真千子。彼女が独りで住まうアパートの部屋には、かつての恋人、博也の骸骨が立っている。
20代のいっときを共に暮らした博也は、真千子と別れて間もなく病死していた。骸骨は、男を捨て去った真千子のうしろめたさが見せる幻影なのだ。
恋人ができると、真千子はその幻に痴態を晒して快感に酔い、そしてまた恋を失うと、もの言わぬ枯骨相手に問わず語りを繰返す。
初めて愛情の持てない男を部屋に入れた夜、暗闇の中で真千子は、男の愛撫に博也の癖を見つける。今自分を陵辱しているのが何者なのか、明かりのついたとき、真千子はそれを見る。

『親指地蔵』
「友情」という枷に嵌められてきた、女3人の物語。
連絡の途絶えた摩子のアパートを訪ねたわたしは、昔のままの彼女に会う。そこで見せられた血塗れの地蔵尊は、かつて親友同士3人で旅したQケ島の「賽の河原」にあったものだった。
旅の場面を思い出しながら、仲良しごっこの裏側にあった本当の関係に気づいていくわたし。

『翼をください』
 親代わりに妹を育てたあと、母親のために実家に縛りつけられてきた姉。そんな姉を案じつつも、姉の新しい恋を快く応援できない妹。
 やっと掴んだかと思えた小さな幸せにも裏切られた姉は、その美しい体に、いつしか母親と同じ醜いしみを浮かばせる。それは忌まわしい刻印だった。

『GMS』
 45歳で子宮は役に立たなくなる!
 医師から子作りのタイムリミットを宣言された44歳のわたし。大きく育っていく子宮の腫瘍を抱えながら、子ダネを求めて右往左往する。メスがメスを産んで繁殖するというミジンコに憧れつつ、ある日・・・・・・。

『棘の路(おどろのみち)』
 学生時代の同級生、九里子が自殺した。通夜の日、帰郷した友人を車に乗せて斎場に向かう道すがら、あたしは、死ぬ前日に遊びに行った九里子の家で見た、窓を叩く不気味な子供の手のひらのことを話して聞かせる。
 幼児虐待、兄弟殺し、子殺し。その原因を作った者は・・・・・・。

『アブレバチ』
 その昔、口減らしのため妊婦を突き落とした岩穴「アブレバチ(溢れ鉢)」。パワハラによって自殺した滝江の故郷の裏山には、そんな忌まわしい場所があった。
 滝絵の同僚だった千穂は、滝江の母誠子に、会社相手の告訴を持ちかけるが断られてしまう。
村の常識にとらわれて会社を怨もうとしない誠子に、苛立つ千穂。しかし、滝江の遺書を読んだ誠子が憎んでいたのは、思いもよらぬ別の人間だった。

『メモリイ』
物とともに思い出す記憶というのがある。もしもその記憶が「物」に封じ込められていたら・・・・・・。
 初めて訪れた街で、偶然入った骨董喫茶「メモリイ」。この世のものではない不思議な人たちがやってくるその店で、わたしは子供の頃に愛したフランス人形と再会する。
 30年のときを経て知った真実に、わたしは長年抱えてきたわだかまりをとかしていくのだった。


【7つの物語にこめた思い】
 
 どの物語にも、30代から40代の女性たちが出てきます。いわゆる「アラフォー」というくくりに入る女たちですが、世間で認識されている<経済的余裕のある自立した女>とは、みんなほど遠い。しかし、わたしにとってはこちらのほうが断然リアル。そして、魅力的です。
この魅力的な女たちをつきつめて書いていたら、こんな7つの物語が生まれました。
 若さという魔法を失い、しかし女という性は円熟期を迎えた女たち。
きらびやかなスポットの当たる舞台からは外れた場末で溺れかけながら、それでも素直に貪欲に、誇りを捨てずにしぶとく泳ぎ続ける彼女たちの姿を、わたしもまた同じ水の中で溺れかけ、もがきながら書きました。
 真千子、摩子、沙江、泰子、奈々絵、由梨絵、由実、千波、誠子、千穂、名の無いわたしやあたし。作者であるわたしの中にいる者もいない者もいますが、わたしは彼女たちを全員、愛してやみません。
 本を手にとってくださる女性たちの中にも、きっと真千子や由実がいるでしょう。読みながら、そんな自分の内なる女たちをぞわぞわさせていただけたら、本望です。

 女たちが抱える黒いしこりを描くのに、怪談ほどぴたりとくる手法はありません。長年読み継がれ語り継がれた怪談話に女の物語が多いのも、そのせいではないでしょうか。

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by etsu_okabe | 2009-05-06 00:00 | 小説作品