小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

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夏休み、最後の日

 朝起きたら突然、<野口の氷屋>のかき氷を思い出した。わたしの田舎、前橋市にある老舗の氷屋だ。 甘露シロップが秘伝の味だとかで、昔どこかの民放のドキュメンタリーで取り上げられていたこともある。
 田舎にいた当時はそんなことは全然知らなくて、ただ美味しいので時々食べに行っていた。シャリシャリふわふわの細か〜い氷のつぶが、たまらない夏の味だった。

「かき氷が食べたい!」

 同じ吉祥寺に住む友人を誘い炎天下出かけると、途中でところ天を売る店を見つけた。
 路面に水槽を出して、小さなおばあちゃんが立っている。注文すると水槽から羊羹状の寒天を掬い上げ、あの憧れのところ天製造機でビニール袋にニョロロ〜ッと押し出して渡してくれるのだ。
 おいしそ〜っ。で、即買い。

 ところ天の袋をぶら下げて、甘味屋へ。
 注文はモチのロンで『宇治金時かき氷!』。
 シャクシャク、はぐはぐ、シャクシャク、はぐはぐ。
 お〜い〜し〜〜〜〜〜い。

 家に帰ってところ天を冷蔵庫に入れ、友人とビール&だだちゃ豆(枝豆のおいし〜ヤツ!)&アスパラガス、そしてシメにカレーライス。
 盛り上がっているうち2人ともところ天を食べ忘れ、友人はそのまま帰ってしまった。

 片付けをしたあと、ほどよ〜く冷えたところ天を器に入れ、酢醤油をかけてちゅるちゅるる〜っ。
 しこしこして旨いっ! 麺太めっ!  コンビニのとは大違い!!

 外からは雷の音、そしてザーッとにわか雨。
 ああ、夏だなあ。
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by etsu_okabe | 2005-08-15 23:28 | 日々のこと/エッセー

27歳のオトコ

「27歳か。その歳の男の子って、迷っているのよね」

 32歳のとき、数年振りにやっと落ちた恋で、5歳年下の相手に地獄を見せられて苦しんでいたとき、年上のおねえさんに言われた言葉だ。
 わたしの新しい恋人には、わたしより10歳も年下の恋人がいて、3年もの間大事に大事に育てた関係があった。最悪なことに、彼はわたしに恋をしておきながら、その関係も捨てきれずにいた。
 あの頃のことを思い出すと、今でも軽い吐き気をもよおす。わたしは顔中に吹き出物を出し、ガリガリに痩せ細り、大袈裟でなく本当に毎日泣いていた。一方、彼の方は二度も胃に穴をあけた。それでも離れられず、めそめそドロドロの状態を数年続けてしまった。

「27歳か。その歳の男の子って、迷っているのよね」

 そういえばそうだなと、後になって思う。

 夢だった職業に就き、幸せな家庭があり、手広く商売をしている親の元で将来は安泰。明るくハンサムで女性にモテて、得意満面に見えた27歳のドラム講師は、何を血迷ったか19歳の小娘の誘惑に乗った。
 生徒として妻のいる自宅へ小娘を連れて行ったり、子供と遊ばせたり、夏合宿には小娘と妻を同じキッチンに立たせたりした。
 何も壊したくないと言いながら、あれほど信頼からほど遠い小娘を使って、一体何を試そうとしていたのだろう。

「27歳か。その歳の男の子って、迷っているのよね」

 十代から追いかけていた夢に破れた27歳の男は、一緒に暮らしていた女に去られ、友達にも見捨てられ、何もかも失くした揚げ句に自分をも失ってしまった。
 <まだ>27歳だったのだ。それからだって何でもできた。それなのに、男が別れた女に真夜中の電話で話すのは、夢に溺れていた頃の思い出話ばかりだった。そのうち酔って怒鳴りだし、脅し、呪い、最後には泣きながら謝って電話を切る。やりきれない暁だった。
 <まだ>27歳だったのに。
 
「27歳か。その歳の男の子って、迷っているのよね」

 わたしにとって思い出深いオトコたちが、揃いも揃って27歳だった。
 一体この歳の男には、何が起きるのだろう。
 それに巻き込まれた19歳と27歳と32歳のわたしには、何か因果があるのだろうか。
 そう言えば、わたしが生まれたとき、父は27歳だった。
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by etsu_okabe | 2005-08-12 02:13 | 日々のこと/エッセー