小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

<   2008年 12月 ( 4 )   > この月の画像一覧

“差し”でよろしく。

 団体行動が苦手だ。
 わたしは決して空気が読めないわけではなく、秩序を乱す人間でもない。むしろその逆で、場の雰囲気をいち早く察してそこにふさわしい言動をとり、みんなが楽しめるよう気を遣う。
 それが仇なのだ。
 空気を最優先することに忙しくて「自分らしさ」にふたをしてしまい、ときには意に反した言動をとってまで場を盛り上げる。
 そんな帰り道にはどっと疲れ、自己嫌悪の嵐。あほらしい。

 というわけで、わたしは基本的に、人ととのつき合いは“差し”である。

 差し向かいのつき合いには「空気」も「ノリ」もない。
 わたしの言葉は100%相手だけに向けて発せられ、相手の言葉は100%キャッチする。フォローはないから取りこぼせない。嘘はすぐにバレる。ごまかしはきかない。あとでなかったことにもできない。どんなバカ話であっても、本音のやりとりだ。無知を晒そうが恥をかこうが、最後まで「わたし」として相手に向き合える。
 そういうつき合いが好きなので、わたしは興味を惹かれた人とはすぐに“差し”で飲みに行きたくなるんです(結局酒か……)。

 ゆうべは久し振りに新宿で、数少ない“差し飲み”友だちSと飲んだ。その中で、最近差しでつき合うのを避ける若い人が増えた、という話になった。
 Sがそのつもりで誘っても、すぐに「じゃあ誰それも呼んで……」となることが多いのだそうだ。「なんで? 二人で飲もうよ」と言うと、相手は決まって「いやでもみんな一緒の方が楽しいし」と、しどろもどろになるそうな。
「よっぽど嫌われてんのかと思うと、そいつらの飲み会や遊びには、絶対呼ばれるんだよね」
 苦笑しながらSが言う。
 誘う相手が女性だとさらに面倒で、それまでグループ内で親しく楽しく話していたのが「それはちょっと」と急に顔をこわばらせ、以後よそよそしくなったりするのだとか。
「告ってねえのに振られた感じになるんだよ!」
 それは憤慨したくもなろう。
 そういうつき合いをしているから断言できるが、Sは差しでつき合った方が100倍面白い男だ。それだけ人間に味がある。そこを味わわずして、何がつき合いだろうか。もったいないことだ。

 以前にも書いたが、わたしはここ最近、職場や趣味の場などでやたらとみんな仲良しなのが、不気味に思えて仕方なかった。もちろん、争うより仲良くする方がいいに決まっているし、わたしも友好には大賛成なのだが、なぜか不気味なのだ。
 その理由がゆうべ、うっすら見えた気がする。
 グループ内での「場」や「ノリ」を共有するだけの仲良しを何よりも大事にし、一人の人間と深く関わろうとしない彼らに、わたしは違和感を覚えていたのだ。

 人と深く関わるというのは、ときにはしんどいこともある。しかしだからこそ面白く、また益がある。
 メアドを知っているだけの100人の「友だち」と毎晩パーティで騒ぐより、魅力的な一人の人間とみっちり一晩語り明かしたいとわたしは思う。また、そう思われる人間でありたい。


 ところで帰り際、Sに、
「えっちゃんて、エロいけど色気はないよね」
 と言われた。カウンターの向こうでは、もう一人の“差し友”であるマスターまでが同意の笑顔である。
 頭をこんぐらからせながら、色気とは何かと訊ねると、
「ん~、簡単に言えば、男への媚かな」
 と言う。
 なるほど。それならいいやと気を取り直して店を出たが、なんか言いくるめられた気がしてならない。
 色気のないエロ女44歳……いやだ、そんなの。
[PR]
by etsu_okabe | 2008-12-30 17:06 | 日々のこと/エッセー

44

 今日わたしは44歳になって、43歳で死んだ父の歳を越えた。

 親に若くして死なれた人がよく同じようなことを言うが、わたしもまた今日まで、自分が父の歳を越えられるとは思っていなかった。もう一方の親である母が、八百比丘尼のごとく衰え知らずに生きているというのに、なぜかそっちは無視して、自分は44歳以上は生きられないと、かたくなにそう信じていた。
 一昨年、ちょっと色っぽいことがあったとき、うまくいきそうもなかったその相手に「わたしが44歳になる日まで、一緒にいて欲しい」などと泣きごとを言ったのも、死ぬとき恋人もいなかったのでは、あまりに自分がかわいそうだと思ったからだ。相手の方にはずいぶん失礼なことだったと思う。

 ばかばかしいと思うかもしれないが、16歳のときから28年間、あと何年、と指を折っていたのだから、それを越えてしまったというのは、実は大きな事件だ。

 つまり今日は、わたしにとって<再生>の誕生日。

 そんな重大な晩、何をしているかというと、一人自室でパソコンに向かっている。ケーキひとつあるわけでもないが、受賞祝いにいただいた日本酒2本と米焼酎1本があるので、あとでひっそりと乾杯でもしようかと思う。
 父のやり残しをわたしが生きることはできないが、自分のやり残しはつぶせる時間ができた。昨日死ぬはずだったと思えば、どんなことでもできる気がする。なりふり構わずやっちゃおう。真っ裸の赤ん坊に戻って、本当のわたしを生きよう!
 よしっ、とりあえず乾杯だ♪(それじゃあこれまでと同じだよ……)

    * * *

 父は43歳で死んだが、母は42歳で未亡人になった。そのことを思うと、これまた感慨深いものがある。
 母はそこそこ美しい人だと思うが、父の死後いっさい男っ気なく、独り身をつらぬいて来週、70歳になる。
 そんな歳になっても、酔っ払って転んでたんこぶ作るような四十娘を抱え、さぞかし世間には肩身が狭かろう。わたしが幽怪談文学賞で最終に残ったと知ったときには、父の墓前に「どうか受からせてあげてください」と祈ったそうだ。今はその掲載誌「幽」を、仏壇に供えているという。なんか、のりうつっちゃいそうな気がするが、それほど喜んでくれているとは、素直に嬉しい。
 親孝行、したのかな?
[PR]
by etsu_okabe | 2008-12-21 01:28 | 日々のこと/エッセー
 前記事にも書きましたが、このたび第三回「幽」怪談文学賞短編部門大賞を受賞いたしました。
 そこで、12月15日より「WEB幽」で始まる<作家ブログ>に参加させていただくこととなり、この「常習女」がリンクされます。

 ということで、そちらから訪問してくださった方に、はじめましてのご挨拶を。

 ついこのあいだ受賞したばかりで、なにが起きているのか分からずおろおろしている間に、WEB幽作家ブログに参加することになりました、岡部えつです。
 単行本が出ているわけでもないのに、「作家ブログ」とはどうもモゾモゾ……落ち着きませんが、よろしくお願いいたします。


 まずはざっくりと、自己紹介をば。

 「岡部えつ」は筆名ですが、ほぼ本名と変わりません。亡父が獅子文六の「悦ちゃん」が好きで、その名をつけてくれました。
 1964年、大阪府豊中市生まれ。そのあと神戸でも暮らしていますが、幼稚園で群馬県前橋市に転居してますので、自分では上州女だと思っています(ブログタイトル「常習女」はそこから)。
 現在は、東京の吉祥寺という街に住んでいます。

 小学校一年生のとき、オリジナルの絵本を書いたのが、最初の創作経験です。
 中学校では、友だちと交換日記ならぬ交換小説を書いていました。最近それが実家の押入れから出てきたのですが、まだキスもしたことないくせに、セックスシーンのてんこもり。そういう子供でした。
 二十代の頃、友人たちと文集を作り、年に数回発行していました。そこで初めて、人に読まれることを意識して小説を書きました。

 2000年、ヤスケンこと安原顕さんに師事。先生が亡くなるまでのおよそ2年半、みっちりしごかれ鍛えられました。それが今の栄養になっています。

 ただ今、5月の短篇集刊行に向けて鬼のように執筆中……と言いたいところですが、年末のため仕事(フリーランスでWEB関連の仕事をしています)に追われる日々でそれがままならず、泣きたいような毎日を過ごしています。a0013420_19423089.jpg
 
 好きなものは、日本酒(今年飲んだベスト3は「五神」「鳳凰美田」「無我夢中」)と赤ワインとシングルモルト(カリラ)と米焼酎と泡盛(与那国の花酒♪)。そして下町のナポレオン「いいちこ」の水割り。

 歳はくっていますが、まだおしりにタマゴの殻をくっつけたひよっこ作家です。どうか、あたたかく見守ってくださいませ。

12月15日(月)発売『幽』10号
わたしの受賞作が掲載されています。⇒
[PR]
by etsu_okabe | 2008-12-15 00:00 | 小説関連の活動など
a0013420_1051534.jpg 久しくブログを更新していませんでしたが、その間、ちょいと気合を入れて小説を書いていました。懸賞小説にチャレンジしてみたのです。
 それで、ブログやあれやこれやがおろそかに。あちこちの方面に、不義理もいたしました。本当に、すみません!!!

 でもでもでも、おかげさまで、応募した「幽 怪談文学賞」の短編部門で大賞をいただきました!

 受賞作「枯骨の恋」は、12月15日発売の「幽」10号に掲載されます。全国の書店にてお買い求めいただけますので、ご興味のある方は、ぜひ。

>>「幽」10号の詳細はこちら
>>bk1でも販売中~

※写真は、現在販売中の「ダ・ヴィンチ」の受賞者発表ページです。選考委員の方たちの前に並んだ空の皿が意味するものは?・・・・・・これからとって食われるのでしょうか・・・・・・。
[PR]
by etsu_okabe | 2008-12-13 11:07 | 小説関連の活動など