小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

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a0013420_3321441.jpg 発売中の『S-Fマガジン9月号』の書評欄<SF BOOK SCOPE>で、『枯骨の恋』を取り上げていただいています。笹川吉晴さんのHORRORのコーナーです。
 6冊紹介されている中で、2冊だけ掲載されている書影のひとつにも選んでいただいて、嬉しい!

 今月のS-Fマガジンは、先だって亡くなられた栗本薫さんの大特集。恥ずかしながらわたしはこれまでほとんど触れてきませんでしたが、昔、鈴木いづみの追悼本か何かで栗本さんが寄せていた文章に、出会ったとき鈴木いづみから「わたしの夫は薫(故阿部薫)という。娘はあずさと言う。だからあなたとは縁を感じる」というようなことを言われた、とあったのを思い出しました。
 名前だけでなく、作家、評論家、ミュージシャンと、いくつもの顔、才能を持ち、それをフル稼働させてこられた人。年齢的には早過ぎる死ですが、その人生の濃さには羨ましさを感じます。

⇒岡部えつ『枯骨の恋』詳細はこちら
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by etsu_okabe | 2009-07-28 03:56 | 小説関連の活動など

開かずのひきだし

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探し物をしていて、長らくCDラックに塞がれていたベッドサイドの引き出しを開けたら、7ドルと40ルピーが出てきた。
40ルピー……あまりに時間が経ち過ぎて、これでどれだけのことができたか忘れてしまった。いよいよ再訪の時か、インド!

※ルピーの左側にポツポツある点は汚れではなく、ホッチキスの針のあと。インドでは、お札をホッチキスで留めてまとめてます。
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by etsu_okabe | 2009-07-26 03:47 | 日々のこと/エッセー
 7月19日から、土用に入った。
 陰陽五行的には、土を掘ったり建築したりの土を犯すことを禁忌としているようだが、九星気学的にはそれプラス、運気の変わり目で人の感情も体調も崩れやすい時期なので、大人しく過ごしましょう、ということになっているそうな。逆に言うと、この時期にトラブルを起こしても、まあしょうがないなってこと(自己流解釈?)。
 で、さっそく大切な人とケンカしてしまった。色々言いたいことはあったが「土用だ土用」とぐっとこらえ、とにかく謝った。喧嘩両成敗で、すっきりしたかった。しかし、わたしの「ごめんね」に対して相手から返ってきたのは「わたしもごめんね」ではなく、「わたしはあなたにこう言われたことでこう傷ついた」という主張だけだった。傷ついたのはお互い様だとわかっているはずなのにぃ、うぐぐ・・・・・・胸の奥で重たい石がごろっと転がったが、そこでもまたぐっと堪え、もう一度謝った。が、何も返事はない。つまりそのあのこれって・・・・・・無視? うぐぐぐぐぐぐぐぐぅうううっ。
 これも土用のせいだ。ああそうだとも、土用のせいさ。土用が明ける8月7日まで、胃を押さえながら目をつむろう。
 こういうストレスって、少し経つと体の思わぬところに出てくるんだよね。ふー。

 明日は新宿歌舞伎町のロフトプラスワンで、「トークイベント『本音で語ろう!生きやすさって何??』」に参加予定。パワハラネットの関係で知り合った、暗器使いさん主催のイベントだ。
 帰りに歌舞伎町の「うな鐵」で、肝串とひれ巻をあてに黒龍でもひっかけて、すっきりしてくるか。
 あら、ロフトプラスワン、夜の部も面白そう・・・・・・うわあっ、さらに深夜の部は新耳袋って。なんだなんだ。
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by etsu_okabe | 2009-07-25 03:36 | 日々のこと/エッセー

ねじ式な旅

「お~、つげ義春の世界」
 古い漁港の町や山深い温泉地などに行ったとき、なにげなく足を踏み入れた路地に裏寂れた佇まいを見つけたり、頬っかむりをした老人がのっそり歩いているのに出くわしたりすると、必ず心で呟いてしまう。
 今回の旅にも、そんな場面が何度かあった。
 しかしなんのことはない。帰って調べてみれば、宿をとった「太海」は、なんとなんと『ねじ式』の舞台だったのだ。ああ、そうと知っていれば、もっとあれこれ計画立てたのに! と、戻った我が家で地団太踏んでももう遅い。
 いやいや、ねじ式どころではない。わたしは今回、ガイドブックひとつ持たずに行ってしまった。時刻表もないので、町や駅の位置関係も怪しいような行き当たりばったりの旅。事前の下調べは宿の場所確認だけだった。
 ところが、そんな旅だからこそ、面白くなることもある。

 今回お世話になった旅館は、夕食にはたいそう豪勢な磯料理がつくのだが、こちらは育ち盛りを過ぎてウン十年、そうでなくても病み上がりで、どかんと船盛りされてもとても食べきれない。それに、一人で船盛り前にしても・・・・・・くっすん。幸い朝食のみという嬉しいプランがあったので、そちらで予約していた。
 そこで夕食には宿お勧めの(というか、そこしかないという感じ・・・・・・)、近所のお寿司屋さんへ出かけることとなった。
 夕方6時過ぎ、「旅館から一番近いお店」のはずが、10分以上てくてく歩いてやっと看板が見えてきた。おお、地酒の名前が入っているじゃないか。合格合格。
 カラリと戸を開けると店内にまだ客はなく、カウンターの60代と思しき主人が「いらっしゃい」と声をかけてくれる。その前に座って早速地酒を注文すると、すぐに「じゃあ何かつまめるものを出しましょうか」と、テンポよく三品ほど作ってくれた。
 さすが漁港の町、どれもこれも新鮮で旨い。お酒はわたし的にはいまひとつだったが、肴が美味しかったので、大満足。

「ご旅行ですか?」
 いい感じにお酒もしみてリラックスしてきた頃に、主人が話しかけてくる。ほんと、実にいいテンポの人だ。ついこちらの口も軽くなる。あっという間にうちとけて、数分後には先週お嫁に出したばかりだという娘さんの結婚式の話で、二人泣いている始末(笑)。
 主人が奥に引っ込むと、これまた間合いよくきりっと白衣を着た息子さんが現われて、話し相手をしてくれる。その横では、もんのすごい美人の奥さんが、しゃきしゃき働いている。
 しばらくして、わたしが下調べもなく予定も立てずに来てしまったことを話すと、みんなでぱぱぱっとおススメの見どころを上げてくれた。ガイドブックはこういうことはしてくれない。
 ・仁右衛門島
 ・誕生寺
 ・清澄寺
 時間的にこの3箇所を順に回ることに決め、最後に握りをさくっといただいて、締め。
 帰りしな、
「ちょうど明日、私も2時ごろ清澄寺に行く予定だから、もし時間が合えばそこでまた会いましょう」
 と主人に言われ、
「はい! その時間に行くようにしますね!」
 と約束して店を出ると、奥さんが車を出してくれていて、宿まで送ってくださった。旅先でのこういう親切は、心に沁みる。

 しかし翌日、徒歩のわたしにはバス&電車の乗り継ぎがうまくいかず、結局1時半にはまだ誕生寺にいて、そこから電車とタクシーで小一時間かかる清澄寺に、2時には到底行けなくなってしまった。
 歩き疲れたし、今日はもうこれで帰ろうと決め、寿司屋の主人にその旨一報メールを入れると、すぐに電話がかかってきた。
「今、家を出たところだから、誕生寺までお迎えに行きますよ」
「えええっ! いいんですか~~~♪」
 ということで、わたしはそこで迎えを待ち、車で清澄寺観光に連れて行ってもらい、そのまま鴨川駅まで送ってまでもらったのだった。

 ああこれだから、旅はやめられない。

 それにしてもあの主人、とても昨日出会ったばかりの人とは思えなかった。なんだろう、この感じは。
 ねじ式の不条理世界に、迷い込んだか。。。
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by etsu_okabe | 2009-07-19 05:01 | 旅のこと

吉方位旅行

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昨日まで夏風邪で寝込んでました。
今も若干、首の横が腫れてます。
しかし!
そんな困難を乗り越えてこその旅、それが吉方位旅行!

九星気学にハマった友人Aに誘われて、一昨年行った佐渡ケ島旅行のあと、まじで運気が上がったもので、続けております。

ここは安房鴨川。海一望の部屋。
東京から東南にあたるこの方位の吉運は、ズバリ『良縁』!!
え~、わたし自身よりも、家族がえらく期待しております……。

※去年この方位(東南)が吉方位だった友だちが、同じくAに説かれて吉方位旅行したところ、みごと電撃結婚にいたったという事実が、うちの家族を妙な妄想に駆り立てているのです(笑)。わたし的には(多分九星気学的にも)、縁つーのはなにも「結婚」だけではなく、いろんな意味での人と人とのつながりだと思ってます。いい縁にめぐり合えますように!
ちなみに、吉方位は星によって、毎年変わります。⇒詳しくはここ
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by etsu_okabe | 2009-07-17 16:25 | 旅のこと
a0013420_21331774.jpg 今週の週刊現代の書評コーナー『カリスマ書店員さんのとっておきおススメ本』で、『枯骨の恋』をなんと1番で取り上げていただいています!!
 読んでくださったのは、宮脇書店西淀川店の砂川昌広さん。ありがとうございます。
 目の肥えた書店員さん(しかもカリスマ!)の目に留まり、読んでいただけただけでも嬉しいのに、こうして推薦していただけるなんて、ああ、本当に幸せです。

 いくつかの雑誌で取り上げていただいてあらためて思うのは、『枯骨の恋』の装丁ってほんっとーに素敵。

 今日、関東は梅雨が明けました。だ~い好きな夏がやってきます。
 今年のビールは、一段とうまいっ♪

⇒岡部えつ『枯骨の恋』詳細はこちら
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by etsu_okabe | 2009-07-14 21:53 | 小説関連の活動など

醤油入れと小さな愛

 またまた与那国での話。

 宿の隣の家に、3兄弟がいた。ここの家の子供ではなく、共働きの両親から預けられていたのだが、隣家の奥さんからはまるで本当の孫ように可愛がられていた。
 長男は小学校1年生、次男は幼稚園生、末っ子はまだ1歳の赤ん坊だ。名前を仮に一郎、次郎、三郎としよう。
 アイドルはもちろん、何をやっても可愛い盛りの三郎だ。大人たちの注目は、彼が全部さらっていってしまう。
 しかしわたしが気にかけていたのは、次郎だった。三郎がいなければきっとまだ大人たちから構ってもらえる年齢だろうに、何をするにも後回しにされてしまうのを、お兄ちゃんだからといつもじっと黙って我慢している。その姿が、けなげでいじらしかった。

 ある日の昼時、次郎と三郎が宿の庭に遊びにきていたときのこと。
 いつものように三郎がちやほやされている中、おとなしく一人で遊んでいる次郎に話しかけてみた。すると彼は、びっくりするほど大きな声で、息せき切って喋り始めた。幼稚園のこと、北谷にいるおばあちゃんのこと、お父さんお母さんのこと。時おり大きく息を吸い上げ、眉を上げたり下げたりしながら一生懸命だ。それまで無口な子供だと思っていたが、喋る機会がなかっただけなのだろう。本当はたくさん、話したいことがあったのだ。わたしはこういうのに滅法弱い。ころりと参ってしまった。
 しばらくして、次郎が何かいじっているのに気がついた。「見せて」と言うと、小さな手のひらに載っていたのは、プラスチック製の醤油入れだった。さっきわたしのお昼ご飯のお皿から、三郎が手にして遊んでいたものだ。隣で次郎も触りたそうにしていたのに、我慢していたのだろう。弟が飽きて放ったのを拾って、ひっそりと一人遊んでいたのだ。
「ねえ、それで水鉄砲つくろうか?」
 わたしが言うと、次郎がこちらを向いてにっこり笑った。
「おいで」
 手をつないで流しへ行き、入れ物をきれいに洗って水を入れた。庭に戻り、落ちていた釘の先で赤いキャップに穴を空け、次郎めがけてぴゅっと押す。
「きゃあああ」
 水攻撃を受けて、次郎は大喜びではしゃいだ。醤油入れを渡すと、自分で何度も水を入れに行きながら、飽きずに遊んでいた。

 彼らが帰ったあと、昼寝をしたり本を読んだりして午後を過ごし、夕方7時頃(与那国は日本最西端の島なので、7時なんてまだまだ夕方だ)、浜の方へ散歩に出かけた。
 ぶらぶらしていると、小学校の校庭に出た。見ると、一郎次郎三郎が、大人の男性と遊んでいるのが見える。小学校の教員をしているという、父親に違いない。
 そこに腰を下ろし、右手に親子、左手に海を眺めながらぼんやりしていると、いつの間にか、すぐ近くの山羊小屋に次郎が来ていた。一郎と三郎とお父さんは、まだ校庭の向こう側で遊んでいる。
「次郎~!」
 呼びかけると、ちょっと驚いたような顔でこちら見た彼は、わたしと分かるとすぐに笑顔になり、山羊の赤ちゃんがいるから見に来いという。近づいてみると、確かに生まれて間もない子山羊が、金網から鼻先を出している。
「可愛いねえ」
 そう言いながらふと、次郎が片手を握りしめているのに気がついた。何だろうと覗き込むと、小さな赤いキャップが見える。あの、醤油入れの水鉄砲だ。
 あれから5時間近く経っているのに、まだこんな大事に。お父さんやお兄ちゃんと遊んでいる間も、離さず持っていたんだ・・・・・・そう思ったら、胸がきゅうんと締めつけられた。

 次郎はわたしのことなど、すぐに忘れてしまうだろう。しかし、いつかお弁当に入った醤油入れを見たとき、これで水鉄砲を作ってくれたおねえさん(←自粛)おばちゃんがいたなと、思い出してくれることがあるかもしれない。その温かい気持ちを、わたしもまたこれから先ずっと、思い出しながら生きていく。
 毎日コンビニ弁当だから毎日思い出す、っていう話ではない。念のため。ちゃんと自炊もしてます、お母さま!
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by etsu_okabe | 2009-07-12 15:23 | 日々のこと/エッセー
「あれはちょっとみっともなかった。恥ずかしかったよ」
 遠い昔、しこたま飲んで酔っ払ったわたしを見た恋人から、翌朝ちくりと言われたことがある。
 前後不覚になって裸になったわけではない。誰かを傷つけたり、因縁をつけて絡んだわけでもない。わたしは普段からおしゃべりだが、酔うとそれに拍車がかかり、さらに饒舌になる。楽しい酒宴ならなおさらだ。テンションが上がって、自分の思いのたけを洗いざらい喋り倒してきゃあきゃあ笑い、ときには泣き、本人は大変いい気分。たいてい、そういうお酒だ。
 そりゃあもちろん、ハメを外し過ぎてしまったと、翌日反省することもある。下戸の友だちから「あんた昨日は完全に酒に飲まれてたよ、気をつけな」と叱られて、落ち込んだこともある。
 でも、でも。恋人からの「恥ずかしい」は、反省や落ち込みだけでは済まない、ちょっとやそっとじゃ立ち直れないくらいショックな言葉だった。わたしの言動が、人に恥ずかしい思いをさせてたなんて・・・・・・。
 以来わたしは、男の人とお酒を飲んでたいそう酔ってしまうと、すぐに「あー、嫌われたな」と思うようになった。ちなみに、「嫌われたくないから酒は控える」というのはわたし的マニュアルには書いていない(ふははは)。

 ところがだ。先日行った与那国でダーリン(宿の主人)と差し飲みしているときのこと。
 いいかげん酔っ払っているわたしに、彼が「もっと飲め。もっと酔っ払え」とどんどん泡盛をすすめるので、ふと気になって聞いてみた。
「なんでわたしをこんなに酔っ払わせて平気なの」
「なんでって、何が?」
「いやじゃない? べらべら喋ってうるさいし」
「誰がいやか。女の酔っ払いは可愛いさ」
「うそお!? 可愛い? こんな酔っ払いが? みっともないと思わないの?」
「みっともないことあるか。どんなにべろべろになったって、女の酔っ払いは可愛いさー」
 彼曰く、女の酔っ払いはどれほど泥酔しようとも、「もっと飲め」と言えば飲み、「やめとけ」と言えばやめ、「もう寝なさい」と言えばころんと横になるので、可愛くて仕方ないのだそうだ。
 理由はともかく、ほぼ泥酔に近いわたしを(そして女全般を)「可愛い」と思う男がいるということに、わたしはえらく感激してしまった。だからこの人はモテるのだと合点もいった。宿のリピーターは圧倒的に女性が多い。

 同じ酔っ払い女を見て、可愛いと感じる人とみっともないと感じる人がいる。それは、立ち位置の違いではないだろうか。彼女の身内に立っていれば愛おしく思え、世間の側に立っていれば恥ずかしく思うだろう。
 恋人であるならば、身内に立つのが正しい。
 振り返ってみると、そういう男性は時々いた。揃っていい男だ。どうして今まで、そういう人とつきあえなかったんだろう。こんな歳になって、自分の見る目のなさに嫌気がさす。
 次に誰かを好きになりそうになったら、大いに酔っ払って相手を見定めよう(やれやれ、結局飲まなきゃならんのか。てへ)。
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by etsu_okabe | 2009-07-09 02:12 | 日々のこと/エッセー
a0013420_22281163.jpg 現在発売中の『小説推理』8月特大号の<今月のベストブック>のコーナーで、東雅夫さんから『枯骨の恋』を取り上げていただいています。
 なんと言いますか、お父さんに褒められたみたいな嬉しさ(すみません、東さん、それほど年齢は変わらないのですが)。

 東さんと言えば『幽』。
 ただいま絶賛発売中の『幽』11号で、わたしは競作特集<厠の怪談>に「縁切り厠」という短篇を載せていただいています。短篇集「枯骨の恋」を書き上げて、“搾りかす”状態で書いた作品ですが、いかがでしょうか。。。
 個人的には、長島さんのカニバリズム怪談の衝撃に、どっくんどっくんいっております。これはスゴイ。
 そしてなんと言っても今回は、<遠野物語>。これを民俗学ではなく、怪談というステージに上げて開いてみれば……という、魅惑と恐怖の特集です。
 遠野物語。二十代の頃に読んだ時には、大昔の伝説という印象でしたが、先日与那国で当たり前に怪異のある島の暮らしを知ってからは、それがぐっと身近な「今」のこととしてとらえられるようになりました。そんなときに折よくこの特集、メラメラムラムラ、なんか体の芯が燃え出してますけども。どうしよう。

⇒岡部えつ『枯骨の恋』詳細はこちら
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by etsu_okabe | 2009-07-05 22:25 | 小説関連の活動など
 久しぶりに前橋に帰った。
 両毛線に揺られて利根川を越え、前橋駅に近づいて車両が減速を始める頃、車窓から懐かしい建物が見えてくる。二十代前半、家を飛び出して男の子と暮らした、思い出のアパートだ。
 朝、同じ電車を逆方向に、高崎の会社に向かっているとき、ふと窓に目をやると、彼がベランダから手を振っていたことが何度かあった。こちらの様子など見えるはずもないのだが、わたしが見ていると信じて、振ってくれていた。与えられるものは惜しげもなく差し出してくれる、優しい人だった。
 わたしが本を出せたことは、彼との日々が少なからず影響している。お礼を言いたいが、わたしは彼のお墓の場所さえしらない。どうしようもない薄情な女だ。仕方ないので、アパートに向かって「ありがとう」と呟いた。あれから二十年以上経つというのに、建物は気味が悪いほど古びておらず、今にも彼が顔を出しそうに見えた。

 前橋駅に着くと、急な依頼にも関わらず運転手役を買ってでてくれた前橋在住の友人が、迎えに来てくれていた。
 メールで簡単に伝えておいたスケジュール通り、まずは紀伊国屋前橋店へ向かう。もちろん『枯骨の恋』のチェックだ。
 巨大ショッピングモール内にあるお店を覗くと、あったあった! 新刊コーナーのいい場所に、なんと三面の平積み。嬉しくてつい書店員さんに話しかけてしまう。すると、
「上毛新聞のインタビュー読みました。応援してます!」
 と、これまた嬉しいお言葉をかけてくださった上に、本5冊と色紙にサインを書かせてくださった。紀伊国屋書店新宿本店に続いて二度目のサイン本&手書きメッセージ、ありがとうございました♪
 その間、友人が一冊買ってくれているので「あなた、授賞式でお土産にもらっていったでしょ」と言うと、それは友だちにあげるのだと言う。これまでにも、何冊か自分で買っては、興味のありそうな人にプレゼントしてくれていたと知り、感激。

 続いて、前橋の書店といえばここという老舗、煥乎堂(かんこどう)へ。子供の頃、父に連れられて何度来たことか。学生時代も本を買うといえばここだった。
 ところが、店内にわたしの本が、ない~~~~。うそお、ショックううう。
 慌ててレジで問い合わせてみると、入っていたが売り切れてしまったという。
「お取り寄せできますよ」
 とおっしゃるので正直に訳をお話すると、
「そうでしたか! またすぐに入れますね」
 と恐縮して言ってくださったので、よろしくお願いしますと頭を下げて店をあとにした。

 次に向かったのは、わたしの大好きな敷島公園。園内のギャラリーで開かれている『金井田英津子 原画展』が、今回の帰郷の第二の目的だったのだ。
 『幽』編集長・東雅夫さん編集『文豪怪談傑作選』の装丁でお馴染みのあの絵たちを、ナマでじっくりと堪能。
 音楽もそうだが、絵もやはり生の迫力は凄い。作家の息遣いやしっとり湿った体温のようなものが、じわじわと差し迫ってくる感じ。ギャラリーのBGMが何故かガムランだったのだが、それが不思議とマッチしていた。
 売られていた金井田さん挿画・装丁の本の中から、迷いに迷って朔太郎の「猫町」を買った。幼い頃、父の書棚で見つけて読んで、その不思議世界に魅了された作品だ。故郷にこんな素晴らしい作家がいることを、初めて知ったのもそのときだった。

 公園近くのイタリアンレストランでランチをしたあと、友人に父の実家まで送ってもらう。
 そこで待っていた伯父伯母にお土産を渡して挨拶し(この伯母は、本の発売日に紀伊国屋に従姉を走らせ、十冊も買ってくれたという)、従姉のR姉の運転する車へ乗り込んで出発!

 さてここからがこの日のメインイベント、数年に一度開かれる「岡部家いとこ会」だ。
 総勢15人のいとこたちが集い、それぞれのパートナーや子供も連れて、わいのわいのと飲み食いするのだが、久しぶりのその会が、このたびわたしの『枯骨の恋』出版祝賀パーティを開いてくれることになった。今回は、11名が参加というからすごい。
 場所は故郷群馬の名湯、伊香保温泉郷。
 お世話になった素晴らしい眺望の宿<晴観荘>の女将さんは、いとこ会会長であるK姉のお友だちで、わたしたちが到着するとご主人と二人で出迎えてくださったのだが、そこでK姉とR姉からいきなり『枯骨の恋』の宣伝を浴び、勢いでK姉所持の一冊を購入してくださった。前橋で本の売上がいいとしたら、K&R姉妹の営業力のたまものに違いない。
 そして嬉しかったのは、本を手に取ったとたんにご主人から、
「あ、この前上毛新聞に出てらした、あの!? 読みましたよ」
 という言葉が出たこと。
 紀伊国屋前橋店に続いて、この日二度目だ。サンキュー上毛新聞!

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 いとこたちから、お祝いにと贈られたスワロフスキーのクリスタルのふくろうは、今わたしの机の上にちょこんと立っている。メッセージカードには「目指せ、直木賞!」とあった。ははは。
 大いに飲んで、笑って、泣いて、
 わたしの喜びが、10倍、いや20倍、30倍にもなった1日だった。
 色んな辛いことや悔しいことがあったけど、そんなの全部吹き飛んだ。

⇒岡部えつ『枯骨の恋』詳細はこちら
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by etsu_okabe | 2009-07-01 01:34 | 小説関連の活動など