小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

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 テーマは「厠」。
 という原稿依頼を怪談専門誌「幽」から受けたのは、昨年、デビュー短篇集の「枯骨の恋」を火事場の馬鹿力で書き上げ、絞りカスのようになっていたときだった。
 もう何も出ませんよ……。これがそのときの、正直な気持ち。
 しかしこれは、わたしを拾ってくれた「幽」での初仕事。なんとしてでもいいものを書き上げねばと、絞りカスをさらにキュキュ~っと絞り上げて書いたのだった。
 原稿を渡すとき、担当のKさんから「このテーマは人気があって、他の作家さんから私が書きたかったって声がいくつもあったんですよ」と聞き、ああ、そんなオイシイ特集で書かせてもらったんだという嬉しさ半分、だとすると皆さんの目は厳しいだろうなあという怖さ半分の、複雑な気持ちだった。

 そしてこの人気テーマが、スゴイ作家陣を集めた単行本になった。そしてそこに「幽・第11号」の厠の怪談特集に掲載されたわたしの作品も、入れていただくことになった。

『厠の怪 便所怪談競作集』
京極夏彦、平山夢明、福澤徹三、飴村 行、黒 史郎、長島槇子、水沫流人、岡部えつ、松谷みよ子/著
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 先日、「カバーができました」と上の画像を送っていただいたとき、松谷みよ子さんの名を見て、あまりの感激に悲鳴を上げてしまった。
 単行本のお話があったとき、もしかしたら松谷さんが、とは聞いていた。それだけでも心臓がバクバクで、いやいやぬか喜びしちゃいかんと、聞かなかったふりをしていた。それほどわたしにとって、松谷みよ子さんは大きな人なのだ。
 わたしは松谷さんの作品を、そう多く読んだ読者とはいえない。しかし、家にあった松谷みよ子全集の「かきのはっぱのてがみ」と「コッペパンはきつねいろ」は、それはもう何度読み返したか分らない。司修さんの挿絵は暗く、お話も大人っぽいものが多くて、松谷さんの本は、他の絵本とはまったく違う匂いをはなっていた。わたしがよく言う「地べたからの視線」は、もしかしたらここが出発点だったかもしれない。ささやかな日常から切り取ったはっとするような小さなできごとを物語にした作品に、特に心を惹かれた覚えがある。

a0013420_2135895.jpg その、憧れの松谷みよ子さんと、一つの本に自分の作品が収まっている。
 今もまだ、胸がいっぱいなのに、現物を見てしまったらどうなることやら。
 『厠の怪 便所怪談競作集』、4月25日発売です。
 >>ビーケーワン

※右の写真は、今回のことで大騒ぎして電話したら、速攻で実家から送られてきた写メ。明日帰るので、久しぶりに読もう。
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by etsu_okabe | 2010-03-21 21:15 | 小説作品