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小説を書いたり、酒を飲んだり、恋をしたり|岡部えつ


by etsu_okabe

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 作家であり編集者でもあった岡本敬三さんが亡くなったとの知らせを、昨晩受けた。
 岡本さんは、わたしの小説の先生だった方だ。安原顕さん亡きあと誰にも師事する気になれず、一人でちまちまと書いていたわたしが、まるで上達の見込めぬ状況に不安を感じ始めたとき、紹介してくださる方があって、岡本教室に入った。
 安原さんの罵倒型指南に慣れていたわたしにとって、岡本先生の優しい褒め型指南は、最初とても物足りなく感じたものだった。わたしは小説がうまくなりたいのだから、いいとこを褒めてもらってもしかたがない。悪いところをバンバン叩いてしごいて欲しい。そう思っていたのだ。
 ところが、何度目かの講評のとき、よーくよーく聞いていたら、しっかりとダメ出しをしてくださっていることに気がついた。なにがどうダメなのか、それを懇切丁寧に例を出したりうまく書けているとことろを引き合いに出して話されるので、自意識の強いわたしのような人間は、つい耳に気持ちのいい言葉だけを拾ってしまっていたのだろう。岡本先生は、優しい口調でしっかり、厳しい指摘もしてくださっていた。
 それに気づいてから、わたしはもうただひたすら、小さな子供のように、岡本先生の言われることを丸呑みし、岡本先生が「よし」と言うものを目指して書いた。講評の時には、耳に痛い指摘をひとつも漏らすまいと耳を澄ませた。
 そうこうしているうち、「どこかいいのか」「どこがダメなのか」を、自分なりに掴むことができた。そしてとうとうある作品の講評で「特に言うことはない」と言っていただけた。
 その言葉を聞いて、わたしは数年振りに、小説懸賞に応募してみようという気持ちになった。そして『幽怪談文学賞』に応募し、大賞を受賞してデビューすることができた。岡本先生がいなければ、わたしにそんな力はつかなかったろう。
 次に出す本も、読んでいただかきたかった。
 ご冥福を、お祈りいたします。
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by etsu_okabe | 2013-06-06 20:19 | 日々のこと/エッセー
 ウディアレン『ギター弾きの恋』を鑑賞。

 多くのミュージシャンや音楽関係者からその才能を認められ、本人も自らを天才と豪語しながらも、フランスの超天才ジャンゴという決して越えられない壁の陰で名声を掴み損ね、いつしか世の中から忘れ去られてしまったギタリスト、エメット・レイの人生を、要所要所で彼を知る関係者たちのインタビューを挟みながら追っていく物語。
 表向きは豪快で破滅的に振る舞っていても本性は気の小さなはったり男であるエメットの、才能はあるのに成功できないジレンマや、無償の愛を注いでくれる女を足蹴にしながらも甘え続けるサイテーぶりや、打算から結婚した上流女の裏切りによって無償愛の尊さに気づいたときにはすでに時遅しのマヌケぶりや、それ全部ひっくるめてとにもかくにも「せつない」が溢れ出てしかたなくなってしまうこの映画の、見どころや褒めどころなんかはもう全部とりあえず横においといて、

 わたくしこのエメット・レイを、実在の人物であると思いこまされて鑑賞しました! ぐおーーーー!! 

 最後のシーンで「ジャンゴを越えた」とナレーションされた、彼が失踪する直前にレコーディングしたという音源を聴きたく思い、wikiってその事実を知った。ほんっっっっと、びっくりした。してやられた。あの下がり眉メガネ男め!
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by etsu_okabe | 2013-06-02 23:07 | 映画/芝居のこと