小説家です|岡部えつ


by etsu_okabe

朝のリレー

 大好きな大人の一人に、谷川俊太郎さんがいる。わたしにとって、言葉が魂を持っているということを教えてくれた、寺山修司と並ぶ偉大な詩人だ。実際、谷川さんと寺山修司は30年来の親しい友人で、寺山の晩年まで続いた二人の「ビデオレター」は、わたしの宝物だ。

 八方塞がりになったとき、谷川さんの詩集を開く。叫び出しそうなほど辛いときは、声を出して読む。すると、苦しみの原因とは全く無関係な言葉たちが、みるみるわたしの中の黒い塊を溶かしていく。
 今、すぐ隣で苦しんでいる友人を、わたしは助けてやることができないでいる。たまたま隣にいただけで、彼女の苦しみは別の生き物に変身してわたしを苦しめる。友人は自分の苦しみに精一杯で、わたしの苦しみには気づかない。わたしは誰にも、助けてと言えない。

 久し振りに谷川さんの詩集を開いた。『二十億光年の孤独』、『魂のいちばんおいしいところ』、現代詩文庫『谷川俊太郎詩集』、『これがわたしのやさしさです』。

        万有引力とは 
        ひき合う孤独の力である
              (二十億光年の孤独)

 あの子に届けてやりたい。

 今、何かに苦しんでいる人に。



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by etsu_okabe | 2005-03-15 16:34 | 音・詩のこと