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小説家です|岡部えつ


by etsu_okabe

枯骨の恋

枯骨の恋_a0013420_2228369.jpgタイトル:枯骨(ここつ)の恋
著者: 岡部えつ
出版:メディアファクトリー
発売日:2009年6月5日

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【短篇集『枯骨の恋』作品紹介】

『枯骨(ここつ)の恋』
あきらめきれもせず、かといって新たな野望を燃やせもしない中年独身女、真千子。彼女が独りで住まうアパートの部屋には、かつての恋人、博也の骸骨が立っている。
20代のいっときを共に暮らした博也は、真千子と別れて間もなく病死していた。骸骨は、男を捨て去った真千子のうしろめたさが見せる幻影なのだ。
恋人ができると、真千子はその幻に痴態を晒して快感に酔い、そしてまた恋を失うと、もの言わぬ枯骨相手に問わず語りを繰返す。
初めて愛情の持てない男を部屋に入れた夜、暗闇の中で真千子は、男の愛撫に博也の癖を見つける。今自分を陵辱しているのが何者なのか、明かりのついたとき、真千子はそれを見る。

『親指地蔵』
「友情」という枷に嵌められてきた、女3人の物語。
連絡の途絶えた摩子のアパートを訪ねたわたしは、昔のままの彼女に会う。そこで見せられた血塗れの地蔵尊は、かつて親友同士3人で旅したQケ島の「賽の河原」にあったものだった。
旅の場面を思い出しながら、仲良しごっこの裏側にあった本当の関係に気づいていくわたし。

『翼をください』
 親代わりに妹を育てたあと、母親のために実家に縛りつけられてきた姉。そんな姉を案じつつも、姉の新しい恋を快く応援できない妹。
 やっと掴んだかと思えた小さな幸せにも裏切られた姉は、その美しい体に、いつしか母親と同じ醜いしみを浮かばせる。それは忌まわしい刻印だった。

『GMS』
 45歳で子宮は役に立たなくなる!
 医師から子作りのタイムリミットを宣言された44歳のわたし。大きく育っていく子宮の腫瘍を抱えながら、子ダネを求めて右往左往する。メスがメスを産んで繁殖するというミジンコに憧れつつ、ある日・・・・・・。

『棘の路(おどろのみち)』
 学生時代の同級生、九里子が自殺した。通夜の日、帰郷した友人を車に乗せて斎場に向かう道すがら、あたしは、死ぬ前日に遊びに行った九里子の家で見た、窓を叩く不気味な子供の手のひらのことを話して聞かせる。
 幼児虐待、兄弟殺し、子殺し。その原因を作った者は・・・・・・。

『アブレバチ』
 その昔、口減らしのため妊婦を突き落とした岩穴「アブレバチ(溢れ鉢)」。パワハラによって自殺した滝江の故郷の裏山には、そんな忌まわしい場所があった。
 滝絵の同僚だった千穂は、滝江の母誠子に、会社相手の告訴を持ちかけるが断られてしまう。
村の常識にとらわれて会社を怨もうとしない誠子に、苛立つ千穂。しかし、滝江の遺書を読んだ誠子が憎んでいたのは、思いもよらぬ別の人間だった。

『メモリイ』
物とともに思い出す記憶というのがある。もしもその記憶が「物」に封じ込められていたら・・・・・・。
 初めて訪れた街で、偶然入った骨董喫茶「メモリイ」。この世のものではない不思議な人たちがやってくるその店で、わたしは子供の頃に愛したフランス人形と再会する。
 30年のときを経て知った真実に、わたしは長年抱えてきたわだかまりをとかしていくのだった。


【7つの物語にこめた思い】
 
 どの物語にも、30代から40代の女性たちが出てきます。いわゆる「アラフォー」というくくりに入る女たちですが、世間で認識されている<経済的余裕のある自立した女>とは、みんなほど遠い。しかし、わたしにとってはこちらのほうが断然リアル。そして、魅力的です。
この魅力的な女たちをつきつめて書いていたら、こんな7つの物語が生まれました。
 若さという魔法を失い、しかし女という性は円熟期を迎えた女たち。
きらびやかなスポットの当たる舞台からは外れた場末で溺れかけながら、それでも素直に貪欲に、誇りを捨てずにしぶとく泳ぎ続ける彼女たちの姿を、わたしもまた同じ水の中で溺れかけ、もがきながら書きました。
 真千子、摩子、沙江、泰子、奈々絵、由梨絵、由実、千波、誠子、千穂、名の無いわたしやあたし。作者であるわたしの中にいる者もいない者もいますが、わたしは彼女たちを全員、愛してやみません。
 本を手にとってくださる女性たちの中にも、きっと真千子や由実がいるでしょう。読みながら、そんな自分の内なる女たちをぞわぞわさせていただけたら、本望です。

 女たちが抱える黒いしこりを描くのに、怪談ほどぴたりとくる手法はありません。長年読み継がれ語り継がれた怪談話に女の物語が多いのも、そのせいではないでしょうか。

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by etsu_okabe | 2009-05-06 00:00 | 小説作品